爬虫類・両生類

  • 概要
  • 参考文献
  • 用語解説

概 要

爬虫類

 爬虫類は前回、海産動物分類群として扱われていたアカウミガメとアオウミガメの2種を加え、2目10科18種(ウミヘビ類を除く)が生息する。この種類数は我が国の爬虫類全種(110種;2013年12月12日現在)の約16%に相当する。なお、ミシシッピアカミミガメは北中米原産で外来種として定着している。
 絶滅のおそれのある種として掲載されたのは、アカウミガメ(CR+EN)、ニホンイシガメ(VU)、タワヤモリ(NT)、ヤマカガシ(NT)の4種で(情報不足DDを除く)、県全体の爬虫類の約22%を占める。
 旧版のレッドデータブック(2003年)からランク変更のあった種は、アカウミガメ(VUから)、ヤマカガシ(低地減少種から)、ジムグリ(低地減少種から)、シロマダラ(低地減少種から)、ヒバカリ(低地減少種から)、ニホンマムシ(低地減少種から)、アオウミガメ(ランク外から)、タカチホヘビ(ランク外から)の8種である。
 カメ類のうち、アカウミガメは、2013年7月、伊予市新川海岸で上陸、産卵が目撃された。ニホンイシガメに関する分布情報は東予と南予が中心であったが、10年前に比べて東予の島嶼部では個体数が減った。クサガメは従来、日本在来種とされてきたが、ニホンイシガメやニホンスッポンと比べて古い文献に登場する時期が遅いこと、遺跡から骨が発見されていないこと、朝鮮半島か中国大陸から持ち込まれたことを示唆するDNAの研究などの理由から、外来種である可能性が高いとされている。ミシシッピアカミミガメは、もともとペットとして飼育されていた個体が野外に放逐され急増しているもので、現在は他の淡水性カメ類よりも広く分布している。ニホンスッポンは、確実に定着している地域があるものの正確な分布状況等は調査されていない。
 ニホンヤモリやニホントカゲ、ニホンカナヘビは、平野部から山地部にかけて広く生息がみられているが、タワヤモリについてはほとんどが海岸地である。
 ヘビ類8種のうち、シマヘビとアオダイショウを除く6種がランク入りした。そのうち、情報不足(DD)であるジムグリ、タカチホヘビ、ヒバカリ、シロマダラ、ニホンマムシの5種はいずれも詳細な分布や生息密度などの情報は不足している。ヤマカガシは、低地~低山部にかけて環境悪化により個体数が激減している。

執筆者:岡山健仁

両生類

 両生類は、2目7科18種が生息する。この種類数は我が国で生息が確認されている両生類(74種;2013年12月12日現在)の約24%にあたる。これらのうち、ウシガエルは北米原産で外来種としてすでに定着している。
 絶滅のおそれのある種として掲載されたのは、カスミサンショウウオ(CR+EN)、シコクハコネサンショウウオ(CR+EN)、ナゴヤダルマガエル(CR+EN)、コガタブチサンショウウオ(VU)、イシヅチサンショウウオ(VU)、トノサマガエル(VU)、アカハライモリ(NT)、ニホンヒキガエル(NT)、ニホンアカガエル(NT)、カジカガエル(NT)の10種で(情報不足DDを除く)、県全体の両生類の約55%を占める。
 旧版のレッドデータブック(2003年)からランク変更のあった種は、シコクハコネサンショウウオ(VUから)、イシヅチサンショウウオ(NTから)、アカハライモリ(低地減少種から)、ニホンヒキガエル(低地減少種から)、カジカガエル(ランク外から)の5種である。
 従来、オオダイガハラサンショウウオ、ブチサンショウウオとされていた種は、系統分類学的な調査研究から本県産のものはそれぞれイシヅチサンショウウオ(2007年)、コガタブチサンショウウオ(2008年)とされた。また、従来ハコネサンショウウオとされていた種は、DNA等を用いた研究から石鎚山系を基準標本とした新種シコクハコネサンショウウオ(2013年)とされた。
 サンショウウオ類では、カスミサンショウウオは今治市の一部(高縄半島)で確認されているものの個体数は少ない。なお2009年3月、愛媛県野生動植物の多様性の保全に関する条例に基づき、捕獲等を禁止する特定希少野生動植物種ならびに開発等の行為を規制する特定希少野生動植物保護区(今治市片上・宅間の2か所)としてそれぞれ指定を受けている。イシヅチサンショウウオは石鎚山系を中心に県下の山地に広く分布しているが、自然公園以外では、森林皆伐や林道建設などによる環境悪化が目立つ。シコクハコネサンショウウオは石鎚以外では、2つの山域に局地的に分布しているにすぎず、個体数も多くはない。コガタブチサンショウウオは、石鎚を中心に東予および中予の山地に分布している。
 オオサンショウウオについては、専門的な調査がなされておらず、すでに40年近く確実な情報がない。
 アカハライモリについては、低地における水田の減少などにより個体数の減少が著しい。
 カエル類12種のうち、今回の調査ではナゴヤダルマガエルの生息は確認できなかった。現在、県指定保護区も近辺が水田放棄のため、その一帯の水環境は消失している。今回のランクは絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)としたが、大三島や伯方島の既知産地では絶滅している可能性も否定できない。したがって、専門家による詳細な調査が必要である。ニホンアマガエルやウシガエル、タゴガエル、ヌマガエルの4種については前回と比べて個体数に大きな変動はないように思われる。カジカガエルやニホンヒキガエルは全県的に減少傾向にあると思われる。

執筆者:岡山健仁



 愛媛県改訂レッドデータブック作成の基盤をなす情報の収集に際して、次に掲げる方々に援助をいただいた。この場をお借りしてお礼を申し上げたい(以下敬称略、50音順)。

 青木雄司、安東新吾、池谷優子、池田敬明、石川和男、石川敬太、石川 裕、市原眞一、伊藤徳、伊東善之、浮田健一、梅木 要、江頭幸士郎、圓戸恭子、太田英利、岡田 純、岡山眞一、小川次郎、越智慎吾、越智清哉、貸谷康宏、加藤淳司、川原康寛、楠 博幸、小林真吾、小柳津未和、笹田直樹、崎山悠輔、白石正人、須賀秀夫、清水孝昭、高村裕二、武智礼央、田村昌吾、手島有平、千葉 昇、徳山崇彦、戸田 守、長尾文尊、中川慎一、中川安喜、永峰令子、西川完途、兵頭佳夫、前田洋一、増永功、松井宏光、松井正文、松田久司、見澤康充、宮内康典、森川國康、森川隆久、矢部 隆、山本栄治、吉川夏彦、渡邉礼雄。 

執筆者:岡山健仁・田邊真吾・宇和 孝