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評価対象種の基本的条件と生物群

評価対象種の基本的条件

 本調査で対象とする生物種の範囲は以下のとおりである。
  • 原則として、一般的によく知られており、生物学的知見(分類、分布、生活史等)が比較的蓄積されている種を含む生物群を評価対象とした。
  • 原則として、肉眼で確認できない小さなものは評価の対象外とした。
  • 分類群のレベルは、動物では種および亜種を評価の対象とした。ただし種または亜種の学名が確定しなくとも、明確に特定でき、報告されたものは評価の対象とした。植物では種および変種(亜種を含む)を評価の対象とし、不稔性の雑種および分類学上の品種を外した。
  • 陸産・淡水産の種、潮下帯を含む海岸域の生物は対象としたが、それ以外の海産のものは原則として対象外とした。
  • 野生化飼養鳥類および飼育動物、帰化動植物(おおむね江戸時代中期以降)、栽培植物とその逸出種などの自然分布しない移入種および侵人種は対象から除いた。
 なお本調査における「愛媛県」とは,行政区域としての愛媛県(潮間帯および潮下帯を含む)を指すが,河川による境界線については,動物に限りその対岸までを含めた。

調査対象の生物群

 本調査で対象とする生物群は以下のとおりである。今回、新たに藻類、地衣類が追加された。
  • ① 哺乳類
  • ② 鳥類
  • ③ 両生類
  • ④ 爬虫類
  • ⑤ 淡水魚類
  • ⑥ 昆虫類
  • ⑦ クモガタ類・多足類
  • ⑧ 貝類
  • ⑨ 甲殻類
  • ⑩ 海岸動物
  • ⑪ 高等植物
  • ⑫ コケ類
  • ⑬ 藻類
  • ⑭ 地衣類
  • ⑮ 高等菌類

カテゴリー区分

 カテゴリー区分は、他のレッドデータブックと比較しやすくするために、環境省レッドリストカテゴリーと判定基準(環境省、2012)に準じたものとして設定したが、定量的要件の面積の条項は設定しなかった。なお要注意種(AN)は今回、愛媛県独自で設定したカテゴリーである。
【 カテゴリー区分の概要 】
カテゴリー 基本概念
絶 滅 絶滅
Extinct(EX)
愛媛県ではすでに絶滅したと考えられる種
野生絶滅
Extinct in The Wild
(EW)
野生では絶滅し、飼育・栽培下でのみ存続している種
絶滅危惧 絶滅危惧I類
(CR十EN)
絶滅の危機に瀕している種
絶滅危惧IA類
Critically Endangered
(CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。
絶滅危惧IB類
Endangered(EN)
IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
絶滅危惧Ⅱ類
Vulnerable(VU)
絶滅の危険が増大している種
準絶滅危惧
Near Threatened (NT)
現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
情報不足
Data Deficient (DD)
評価するだけの情報が不足している種
要注意種
Attention needed(AN)
愛媛県内の分布域全体を俯瞰すると,現時点で種として絶滅のおそれがあるものではないため上記カテゴリー(CR~NT・DD)には該当しないが、県内の生物多様性の保全の観点から今後の個体数や生息条件の変化にとくに注意する必要があると考えられる種

カテゴリー定義の詳細(EX~DD)

区分及び基本概念 定性的要件 定量的要件
絶滅
Extinct(EX)
愛媛県ではすでに絶滅したと考えられる種
過去に愛媛県に生息したことが確認されており、飼育・栽培下を含め、本県ではすでに絶滅したと考えられる種  
野生絶滅
Extinct in The Wild (EW)
飼育・栽培下でのみ存続している種
過去に愛媛県に生息したことが確認されており、飼育・栽培下では存続しているが、本県において野生ではすでに絶滅したと考えられる種
【確実な情報があるもの】
  • 信頼できる調査や記録により、すでに野生で絶滅したことが確認されている。
  • 信頼できる複数の調布によっても、生息が確認できなかった。
  • 【情報量が少ないもの】
  • 過去50年間前後の間に、信頼できる生息の情報が得られていない。
 
絶滅危惧
Threate-
ned
絶滅危惧I類
(CR十EN)
絶滅の危機に瀕している種

現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの。
次のいずれかに該当する種

【確実な情報があるもの】
  • 既知のすべての個体群で、危機的水準にまで減少している。
  • 既知のすべての生息地で、生息条件が著しく悪化している。
  • 既知のすべての個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている。
  • ほとんどの分布域に交雑のおそれのある別種が侵入している。

  • 【情報量が少ないもの】
  • それほど遠くない過去(30年~50年)の生息記録以後確認情報がなく、その後信頼すべき調査が行われていないため,絶滅したかどうかの判断が困難なもの。
絶滅危惧IA類
Critically Endangered
(CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。
絶滅危惧IA類(CR)

A. 次のいずれかの形で個体群の減少が見られる場合。

  • 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、90%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっており、かつ理解されており、かつ明らかに可逆的である。
  • 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、80%以上の減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。
  • 今後10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、80%以上の減少があると予測される。
  • 過去と未来の両方を含む10年間もしくは3世代のどちらか長い期間において80%以上の減少があると推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。

B. 次のうち2つ以上の兆候が見られる場合。

  • 生息地が過度に分断されているか、ただ1ヵ所の地点に限定されている。
  • 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に継続的な減少が予測される。
  • 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に極度の減少が見られる。

C. 個体群の成熟個体数が250未満であると推定され、さらに次のいずれかの条件が加わる場合。

  • 3年間もしくは1世代のどちらか長い期間に25%以上の継続的な減少が推定される。
  • 成熟個体数の継続的な減少が観察,もしくは推定・予測され、かつ次のいずれかに該当する。
    • 個体群構造が次のいずれかに該当
      • 50以上の成熟個体を含む下位個体群は存在しない。
      • 1つの下位個体群中に90%以上の成熟個体が属している。
    • 成熟個体数の極度の減少

D. 成熟個体数が50未満であると推定される個体群である場合。

E. 数量解析により、10年間、もしくは3世代のどちらか長い期間における絶滅の可能性が50%以上と予測される場合。

    絶滅危惧IB類
Endangered
(EN)
IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
絶滅危惧IB類(EN)

A. 次のいずれかの形で個体群の減少が見られる場合。

  • 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、70%以上減少があったと推定され、その原因がなくなっており、かつ理解されており、かつ明らかに可逆的である。
  • 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、50%以トの減少があったと推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。
  • 今後10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて、50%以上の減少があると予測される。
  • 過去と未来の両方を含む10年間もしくは3世代のどちらか長い期間において50%以上の減少があると推定され、その原因がなくなっていない、理解されていない、あるいは可逆的でない。

B. 次のうち2つ以上の兆候が見られる場合。

  • 生息地が過度に分断されているか、5以下の地点に限定されている。
  • 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に継続的な減少が予測される。
  • 出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に極度の減少が見られる。

C. 個体群の成熟個体数が250未満であると推定され、さらに次のいずれかの条件が加わる場合。

  • 3年間もしくは1世代のどちらか長い期間に25%以上の継続的な減少が推定される。
  • 成熟個体数の継続的な減少が観察、もしくは推定・予測され、かつ次のいずれかに該当する。
    • 個体群構造が次のいずれかに該当
      • 250以上の成熟個体を含む下位個体群は存在しない。
      • 1つの下位個体群中に95%以上の成熟個体が属している。
    • 成熟個体数の極度の減少

D. 成熟個体数が250未満であると推定される個体群である場合。

E. 数量解析により、20年間、もしくは5世代のどちらか長い期間における絶滅の可能性が20%以上と予測される場合。

  絶滅危惧Ⅱ類
Vulnerable
(VU)

絶滅の危険が増大している種
現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合,近い将来「絶滅危惧I類」のランクに移行することが確実と考えられるもの。
次のいずれかに該当する種

【確実な情報があるもの】
  • 大部分の個体群で個体数が大幅に減少している。
  • 大部分の生息地で生息条件が明らかに悪化しつつある。
  • 大部分の個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている。
  • 分布域の相当部分に交雑可能な別種が侵人している。

A. 次のいずれかの形で個体群の減少が見られる場合。

  • 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて,50%以上の減少があったと推定され,その原因がなくなっており,かつ理解されており,かつ明らかに可逆的である。
  • 過去10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて,30%以上の減少があったと推定され,その原因がなくなっていない,理解されていない,あるいは可逆的でない。
  • 今後10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて,30%以上の減少があると予測される。
  • 過去と未来の両方を含む10年間もしくは3世代のどちらか長い期間において30%以上の減少があると推定され,その原因がなくなっていない,理解されていない,あるいは可逆的でない。

B. 次のうち2つ以上の兆候が見られる場合。

  • 生息地が過度に分断されているか,10以下の地点に限定されている。
  • 出現範囲,生息地面積,成熟個体数等について,継続的な減少が予測される。
  • 出現範囲,生息地面積,成熟個体数等に極度の減少が見られる。

C. 個体群の成熟個体数が10,000未満であると推定され、さらに次のいずれかの条件が加わる場合。

  • 10年間もしくは3世代のどちらか長い期間に10%以上の継続的な減少が推定される。
  • 成熟個体数の継続的な減少が観察、もしくは推定・予測され、かつ次のいずれかに該当する。
    • 個体群構造が次のいずれかに該当
      • 1,000以上の成熟個体を含む下位個体群は存在しない。
      • 1つの下位個体群中にすべての成熟個体が属している。
    • 成熟個体数の極度の減少

D. 個体群が極めて小さく、成熟個体数が1,000未満と推定されるか、生息地面積あるいは分布地点が極めて限定されている場合。

E. 数量解析により、100年間における絶滅の可能性が10%以上と予測される場合。

準絶滅危惧
Near Threatened
(NT)
存続基盤が脆弱な種現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの。
次に該当する種
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。具体的には、分布域の一部において、次のいずれかの傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。 
  • 個体数が減少している。
  • 生息条件が悪化している。
  • 過度の捕獲・採取圧による圧迫を受けている。
  • 交雑可能な別種が侵入している。
   
情報不足
Data Deficient
(DD)
評価するだけの情報が不足している種
次に該当する種
環境条件の変化によって、容易に絶滅危惧のカテゴリーに移行し得る属性(具体的には、次のいずれかの要素)を有しているが、生息状況をはじめとして、ランクを判定するに足る情報が得られていない種。 
  • どの生息地においても生息密度が低く希少である。
  • 生息地が局限されている。
  • 生物地理上、孤立した分布特性を有する(分布域がごく限られた固有種等)。
  • 生活史の一部または全部で特殊な環境条件を必要としている。