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重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは、2011年に初めて特定されたSFTSウイルスに感染することによって引き起こされる感染症です。2013年3月4日に感染症法上の四類感染症として届出対象に指定されて以来、主に西日本を中心に患者報告が続いています。
この疾患はマダニによって媒介されます。感染すると6~14日の潜伏期間を経て、発熱、消化器症状、頭痛、筋肉痛などの様々な症状を引き起こし、重症化すると死亡することもあります。
日本では2013年1月に初めて患者(2012年秋に死亡)が確認されました。その後過去にさかのぼって調査したところ、2005年から2012年の間にさらに10名の方がSFTSにかかっていたことが確認されています。
県内の届出数は2015年以降、年間1~4例と横ばいで推移していますが、全国的には増加傾向にあり、2023年には届出開始以降最多の134例の届出がありました。
マダニの活動が活発になる春から秋にかけて患者が増加する傾向にあるため、今の季節は注意が必要です。
草むらや藪などのマダニの生息する場所に入る際は、肌を露出しない服装を心がけ、マダニに効果のある防虫スプレー(ディート含有)を使用するなどマダニに咬まれないよう十分注意しましょう。感染対策の詳細は、「感染対策」をご覧ください。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の届出が、第31週(7月29日から8月4日)に1例ありました。患者は宇和島保健所管内在住の60歳代男性で、死亡したことが報告されました。
図1は、2024年8月7日現在の愛媛県におけるSFTS患者の発症年別発生状況です。これまでに県内で確認されたSFTS患者数は46例で、そのうち死亡例は、2013年3例、2014年5例、2017年1例、2022年2例、2023年1例、2024年1例の計13例報告されています。
図2は、愛媛県におけるSFTS患者の月別発生状況です。
12月や2月の冬期にも発生がみられますが、多くがマダニ類の活動時期(春から秋)である4月から9月に発症または病院を受診しており、今の季節は特に注意が必要です。
図3は、愛媛県におけるSFTS患者の居住地区の分布です。
内訳は、八幡浜保健所管内が18例(39.1%)、宇和島保健所管内が14例(30.4%)、松山市保健所管内中予及び中予保健所管内が各4例(8.7%)、今治保健所管内及び県外が各3例(6.5%)となっています。
図4は、愛媛県におけるSFTS患者の年齢分布です。
患者は男性26人、女性20人で、50歳代以上が93.5%(43人)と多くを占めています。
2024年1月31日までに全国で患者報告があった都道府県は、東京都、神奈川県、富山県、石川県、福井県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の30都府県で、西日本を中心に報告されています。
図5重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者報告があった都道府県
多くの場合は、ウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染します。
そのため、マダニの活動時期である春から秋にかけては特に注意が必要です。
マダニ類は、固い外皮に覆われた比較的大型のダニで、成ダニでは吸血前で3~8mm、吸血後は10~20mm程度の大きさです。
マダニは、食品等に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するやヒョウダニなど、家庭内に生息するダニとは種類が異なり、主に森林や草地などの屋外に生息しています。
ただし、すべてのマダニがSFTSウイルスを保有しているわけではありません。
キチマダニの成虫 ♂(左)♀(右)
体の大きさ:約2mmから3mm
キチマダニの若虫
体の大きさ:約1mm
タカサゴキララマダニの若虫
体の大きさ約2mm
日本における調査では、2013年5月から開始された厚生労働科学研究において、九州から北海道の26自治体のマダニ(18種4,000匹以上)を調査したところ、複数のマダニ種(タカサゴキララマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、オオトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ等)から、SFTSウイルス遺伝子が検出されました。
保有率は5~15%程度とマダニの種類により違いがありました。
これらのSFTSウイルス保有マダニは、既に患者が確認されている地域(宮崎、鹿児島、徳島、愛媛、高知、岡山、島根、山口、兵庫県)だけではなく、患者が報告されていない地域(三重、滋賀、京都、和歌山、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、栃木、群馬、岩手、宮城県、北海道)においても確認されました(調査時点)。
下記のマダニは愛媛県にて採取したマダニです。
中国の調査では、患者が発生している地域で捕まえたフタトゲチマダニの5.4%がSFTSウイルスを保有していたとの報告があります。
マダニに咬まれて6日から2週間ほど潜伏期間の後、原因不明の発熱や消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が中心です。
その他の症状として、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸不全症状、出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)などがあります。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の感染を防ぐには、マダニに咬まれないことが重要です。
野山や畑、草むらなど、ダニ類の生息場所に出かけるときには、次のことに気をつけましょう。
ペットもマダニ対策を心がけましょう。
マダニに咬まれていた場合マダニに咬まれても痛みはなく、気が付かない場合が多いとされています。
マダニ類の多くは人や動物に取りつくと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、長時間(数日から長いものは10日以上)吸血します。
吸血中のマダニに気がついた時は、無理に引き抜こうとすると、マダニの一部が皮膚に残ったり、マダニの体液を逆流させる恐れがあるため、皮膚科で処置してもらってください。
すぐに医療機関を受診できない場合は、ワセリン法をお試しください。
マダニに咬まれた後に、発熱や食欲低下、嘔吐等の症状があった場合は医療機関を受診してください。
マダニを介さず直接動物(犬、猫等)から感染する事例も報告されています。
最近の研究で、SFTSウイルスに感染し、発症している野生動物や猫・犬などの動物の血液からSFTSウイルスが検出されています。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、感染症法の四類感染症に位置付けられています。SFTSが疑われる症例の検査の実施については、保健所にご相談ください。
また、SFTSと診断した場合は、直ちに保健所への届出をお願いします。
届出基準及び届出様式はこちら感染症法に基づく医師の届出のお願い(厚生労働省)<外部リンク>