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ご利用について

種の保存とは?

絶滅への過程

動植物の絶滅は、以下に述べるような要因が、単独もしくは複数重なって起きることが知られています。

【 個体数の減少 】

個体群の個体数が減少すると、次に述べるような影響があらわれて絶滅が起こりやすくなります。

  • 近親交配の害によって生活力が低下します。例えば、有害な遺伝子の影響を受けやすくなったり、子供を産む数や種子数が減少したり、環境の変化に対応する能力が低下します。
  • 生物種にはそれぞれ適した生息密度が存在することが知られています。個体数が減って生息密度が低くなることで天敵への集団による防御力が低下したり、生殖の相手を見つけることが困難になります。
  • 集団内での病気の流行や、自然災害などによって短期間のうちに絶滅へと追いやられる可能性が増加します。
【 個体群の分断 】

 個体数の減少だけではなく、個体群の分断も個体数の減少と同じ効果をもたらして絶滅の原因となります。一例として、森の中に一本の道路を作ると、道路の幅の何倍もの幅で環境が変化して移動を阻む"壁"ができてしまい、個体群が分断されます。その結果、森全体では種が存続するのに十分な個体数が生息していても、分断されたそれぞれの生息地では個体群を維持するのに十分な個体数を下回って、短期間のうちに個体数が減少し、絶滅してしまうことがあります。

【 生息地の縮小・消滅 】

 道路建設・宅地や産業用地などの開発・埋め立て・干拓・河川改修・護岸工事・圃場整備などの開発行為によって生息地が縮小したり消失すると、生息可能な個体数が減少したり棲み場所を失って、そこに棲んでいた動植物は絶滅します。

【 生息環境の悪化・その他 】
  • 森林の伐採や自然林から人工林への改植によって植生が変化し、植物と特殊な関係を持つ昆虫類などが連鎖的に絶滅することがあります。例えば、チョウの仲間には、特定の植物しか食べない種があり、その植物が絶滅することによって、チョウの絶滅も起きることがあります。
  • 森林に道路を作ると、道路の周辺の乾燥化が起きたり、ゴミの不法投棄によって環境の悪化が起きたり、道路を使ってイヌやネコ、ネズミ類など本来分布していない動物が侵入しやすくなり、新たな捕食者になります。
  • 生息地が良好に保たれていても、道路や護岸、ダム、堰などによって、動物の移動経路が遮断されたり、産卵場が消滅し、生息地は残っていても絶滅へと至る場合もあります。例えば、孵化後川を下って海で育ち、再び川へ戻って生活する魚類、エビ・カニ類がいるほか、普段は海岸沿いの山などにすんでいて、産卵の時だけ水辺に降りてくるカニの仲間にとっては、移動経路の遮断は致命的となります。
  • 外来種の侵入により、在来の種が生育場所を奪われたり捕食される場合があります。また、交雑によって在来の固有性が失われることがあります。動物ではブラックバス・ブルーギル・タイリクスズキ・アカミミガメ・ウシガエル・クワガタの仲間など、植物ではセイヨウタンポポ・オオオナモミ・オオイヌノフグリなどが有名な外来種です。外来種は、新たな寄生性の生物、細菌やウイルスなどによる病気を持ち込むことがあります。国内他地域からの移入やペットの放逐でも同様の害が起きることがあります。
  • 家庭や工場などからの排水による水質汚濁やそれに伴う底質の悪化により種の絶滅が起きることがあります。近年では、環境ホルモンによる生殖障害などの影響が指摘されています。

種の存続

 個体群が維持されて、種が存続するにはどれくらいの個体数が必要なのでしょうか。生殖方法の違いなどによってその数は異なると思われますが、一般的に古くからいわれている「50-500則」と呼ばれるものがあります。すなわち、近親交配の弊害を回避して約100年間生息するには生殖に参加できる数が50個体必要で、さらに、環境の変動に対応して生き残るためのいろいろな個性、つまり遺伝的変異を保つためには500個体が必要であるといわれています。大形の哺乳類では、野生のオオツノヒツジをアメリカ合衆国で50年にわたって追跡調査した結果、50個体未満の個体群は50年以内に全て絶滅したのに対して、100個体を超える個体群は絶滅しなかったという調査結果があります。
 環境省のレッドデータブックでも、成熟した、つまり、生殖に参加できる個体数が50未満となると絶滅危惧1A類という最も危険なカテゴリーに属します。
 また、一度個体数が減少すると種内の遺伝的な多様性が低くなります。再び個体数が増加しても遺伝的な多様性の低くなった影響が残って、環境の変化などに対する能力が低下してしまうこともあります。
 一個の個体が生まれて必ず死ぬように、自然界では新しい種が生まれたり、絶滅が起こったりしています。しかし、現在では人間活動の影響によって自然に起きるよりもはるかに大きな速度で種の絶滅が起きているといわれています。

種の多様性の維持

 種の絶滅の危険を解決もしくは小さくするためには「自然環境の保全」がもっとも重要です。多様な自然環境を守り保全することが、多くの種類の動植物を私たちの未来に残すことになります。
種の絶滅は、遠い国での出来事ではなく、私たちの身のまわりでも起きているのです。とりわけ、愛媛県固有種(愛媛県だけに分布する種)の絶滅は深刻な問題です。今回のレッドデータブックに掲載されている種のうち、昆虫30種、陸貝4種が愛媛県固有種(亜種も含む)です。愛媛県の固有種の絶滅は、地球上からその種が絶滅することを意味します。
 レッドデータブックの完成は終着点ではありません。これをもとに、県民、行政、事業者、研究者が一緒になって未来の愛媛県の自然のあり方を考えるための出発点に立つためのものなのです。このホームページに載っているのは、絶滅してしまったりその危機にある動植物ですが、それらを含めたすべての種類の動植物が、生態系の一員として存在意義を持っています。
 レッドデータブックは定期的に見直すことが必要です。現状のまま手をこまねいていては、新たな絶滅種・絶滅危惧種が増えてゆきます。自治体や県民一人一人が考えて行動し、今回掲載された1342種という数が、次のレッドデータブックでは少しでも減らせるように、みんなで力を合わせていきたいものです。

絶滅の概念

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