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貝類

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概 要

 2003年の愛媛県レッドデータブックでは海産貝類は「海産動物」のなかに、陸・淡水産貝類は「陸・淡水産貝類ならびに淡水産甲殻類」のなかにまとめられたが、今回は貝類として1つにまとめることになった。ただ前回2つに分けて書いたのでそれを今回も踏襲した。
 海産貝類、陸・淡水産貝類といっても、その区分けは便宜的であり、陸産貝類の中には海浜棲陸貝ともいわれる海岸の高潮帯のみに棲む貝や内湾奥のアシ原内に棲む貝も含めている。また淡水産貝類の中にも河口域に棲む汽水産の貝も含めているが、これらのなかには海産貝類として取り扱われるものもある。国内には陸産貝類は約900種、淡水産貝類は約130種、海産貝類は約8000種が棲息する。そのうち愛媛県内では陸産貝類173種、淡水産貝類47種を、また海産貝類は2140種を確認している。
 陸・淡水産貝類の確認種は前回より数種増えているだけである。これは調査不足のせいで追加されたものから、分類上でわけられたものなどがある。一方、海産貝類はかなり増加している。海は広いので調査不足は否めないが、温暖化の影響で偶発的に採集される南方系の種が増えているためもある。
 海産貝類は愛媛県は内湾的な環境である瀬戸内海から、黒潮の影響を受け、造礁性サンゴが生育する宇和海と多様な海岸線を持つ。このため多様な種が生息している。しかし、埋め立てや護岸工事、海岸沿いの道路建設によって自然海岸の占める割合は低くなりつつある。特に東予地方では遠浅の干潟が多かったが、現在では埋め立てが広い範囲で行われ、貴重な環境が失われた。生活排水、工業廃水による水質の悪化も指摘されている。
 最近の傾向としては、温暖化の影響で、南方系の種が北進しているが、種によって増減が目立つ。前回絶滅としたヒメカノコとスダレハマグリは復活した。南方から幼生が多量に漂着したとしか思えない。ウミニナ、コオロギ、オチバガイは県全体で増加したため、ウミニナはレッドリストから外し、コオロギとオチバガイはカテゴリーを下位にした。一方でイボキサゴとイボウミニナは減少し、カテゴリーを上位にした。さらに新しくオニサザエ、マツムシ、シワホラダマシ、コホラダマシ、オガイをレッドリストに加えた。このように増加する種もあれば、減少する種もある。これらの要因は不明である。これらの変化は今後も続くものと思われる。
 陸産貝類の特徴として、移動性が乏しいことがあげられる。従って地域により種が異なってくるし、場合によっては1つの山あるいは1つの島にしかいないという種もいる。愛媛県は細長いため、東側には近畿地方から分布を広げた種、南西側には九州から分布を広げた種、また中国地方との関連種、そして四国の固有種といろいろな種が生息している。そのため1つの県としての種類数は多い方である。愛媛県の固有種はシロハダギセル、タカシマゴマガイ、タダアツブタムシオイの3種と固有亜種のミサキギセル1種の計4種であり、徳島県や高知県に比べて少ない。また固有種に近いものとしてシコクタケノコギセルとニッポンノブエガイがいる。これら6種とも掲載種である。
 多くの種の陸産貝類に適した環境は自然の広葉樹林であるが、植林や宅地開発などで減少し続けている。過去には連続していた分布域を人工林や宅地などで分断され、現在は社叢林や山頂部、谷筋などの狭い地域に生息している種が多くみられる。生息域がさらに小さくなり死滅することによって、陸産貝類の生息個体数は減少しつつある。今回特に目立つのは、わずかに残った広葉樹林は荒れて乾燥していることである。全体的に生息個体数が減少し、前回の調査で確認できたが、今回の調査では確認できない場合が多くなってきた。今回はレッドリストに2種を追加しただけだが、将来的は追加する種が増加するものと思われる。
 海浜棲陸貝は、高潮帯、塩性湿地や河口のヨシ原付近に生息するが、護岸工事や河川改修などにより、生息可能な環境が減少しつつある。加えて、内湾や河口域では家庭排水を主な原因とする水質汚濁が、大きな打撃を与えている。前回絶滅としていたオカミミガイは生息を確認した。また追加した2種は新しく生息を確認した種と混同されていた種が判明したものである。
 淡水産貝類は、水路や川のコンクリート化、ため池の埋め立て、宅地化などにより生息域が減少しつつあるほか、海浜棲貝類同様に水質汚濁が大きな影響を与えている。今回は6種を追加した。これらはため池の埋め立てや水路の改変が大きいと思われる。さらにマシジミの激減は移入されたタイワンジミの影響が大きいと考えられる。

執筆者:石川 裕