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えひめの豊かな海と漁業を育む水産振興条例

ページID:0090530 更新日:2024年10月18日 印刷ページ表示

 本県の海域は、佐田岬半島を境に瀬戸内海と宇和海に大別され、さらに瀬戸内海は東部の燧灘と西部の伊予灘に区分され、瀬戸内海を中心とした大小391もの島々や宇和海沿岸のリアス海岸等により形成される海岸線の総延長は、全国第5位の約1,700キロメートルに及び、漁港数は全国第3位の187漁港を擁している。

 これらの海域には、多様な魚介類が生息し、底びき網、船びき網、まき網、一本釣り等の多種多様な漁船漁業や、生産量及び産出額ともに全国第1位のまだい及びしまあじのほか、ぶり類、あこやがい、くろまぐろ、のり類等の養殖業が展開されており、特に宇和海沿岸域は、全国屈指の魚類、真珠、真珠母貝等の養殖生産地として知られている。

 また、内陸部では、重信川水系及び肱川水系のほか、大小様々な河川及び渓流も多く、あゆ、あまご等の採捕が行われている。

 一方で、本県の水産業を取り巻く環境は、気候変動による漁場環境の変化、水産資源の減少、漁業者の高齢化、担い手の減少のほか、魚離れによる消費量の減退及び魚価の低迷等により、厳しさを増している。

 本県の水産業を将来にわたり継承し、発展させていくためには、新たな付加価値の創造、もうかる水産業としての競争力の強化、頻発化及び激甚化する自然災害を踏まえた漁業基盤の強靱(じん)化等情勢の変化に的確に対応して、顕在化している様々な問題に対し積極果敢に取り組んでいかなければならない。

 また、豊かな漁場や水産資源に恵まれた愛媛の海を守り、持続的な生産が可能な海づくりを進めるためには、水産業者のみならず、県民一人ひとりが、日常生活や事業活動においてプラスチックごみのほか、海洋ごみの削減等環境に配慮した行動を実践することが求められる。

 ここに、本県の水産業及び漁村の継続的な振興を図り、県、水産業者、水産団体、県民のほか、関係者が一体となって「水産王国えひめ」の更なる発展を目指すことを決意し、この条例を制定する。

 (目的)

第1条 この条例は、水産業及び漁村の振興に関する基本理念を定め、県の責務、水産業者及び水産団体並びに県民の役割について明らかにするとともに、水産業及び漁村の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、当該施策を総合的かつ計画的に推進し、もって本県の水産業及び漁村の持続的な発展並びに県民の豊かな暮らしの実現に寄与することを目的とする。

 (定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 (1) 水産業 漁業、水産加工業及び水産流通業をいう。

 (2) 水産業者 水産業を営む者をいう。

 (3) 水産団体 水産業者が組織する団体をいう。

 (4) 水産業及び漁村の有する多面的機能 豊かな自然環境の形成、海の安全及び安心の提供、安らぎのある空間の提供等漁村で水産業が行われることにより生ずる食料その他の水産物の供給の機能以外の水産業及び漁村の有する多面にわたる機能をいう。

 (5) 海洋ごみ 海岸等にあるごみ、海域に漂流しているごみ及び海底にあるごみをいう。

 (6) 県産水産物等 県内で生産された水産物及びその加工品をいう。

 (7) えひめブランド 県産水産物等であって、高品質であること等の特性により消費者に信頼感等を与えるものをいう。

 (8) 環境にやさしい水産業 環境への負荷の低減に配慮し、持続可能な生産活動を行う水産業をいう。

 (基本理念)

第3条 水産業及び漁村の振興は、次に掲げる事項を基本として行われなければならない。

 (1) 海域、気候等の特性に応じて、収益性の高い、安定的な漁業経営が確立されること。

 (2) 漁業の担い手が確保され、将来にわたって漁業が持続的に営まれること。

 (3) 安全で安心な水産物の安定的な生産及び供給並びに消費者の需要の動向に即した水産業の健全な発展に資すること。

 (4) 漁村が果たしている水産業の持続的な発展の基盤たる役割が適切かつ十分に発揮されること。

 (5) 水産業及び漁村の有する多面的機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されること。

 (6) 持続的な生産が可能な豊かな海が継承され、水産動植物の生育環境及び水産資源が維持されること。

 (県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、水産業及び漁村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、前項の施策を策定し、及び実施するに当たっては、国、市町、関係都道府県、水産業者、水産団体、県民等との連携に努めるものとする。

 (市町との連携等)

第5条 県は、市町が実施する施策との整合を図るため、市町と情報交換を行う等緊密に連携するとともに、助言その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

 (水産業者及び水産団体の役割)

第6条 水産業者及び水産団体は、自らが安全で安心な水産物の生産及び供給並びに活力ある漁村づくりの主体であることを認識し、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。

 (県民等の役割)

第7条 県民は、基本理念にのっとり、水産業及び漁村の有する水産物の供給の機能並びに水産業及び漁村の有する多面的機能の重要性について理解を深め、地産地消等の取組を通じて水産業及び漁村を支援するとともに、県が行う水産業及び漁村の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

2 県民は、水産動植物の生育環境の保全及び改善に資するよう、海洋ごみを削減するための行動を実践するとともに、水質の保全及び森林の整備を図るための活動に参加するよう努めるものとする。

3 余暇活動等を行う者は、漁業に支障を及ぼさないように、及び水質に悪影響を及ぼさないように努めるものとする。

 (基本計画)

第8条 知事は、水産業及び漁村の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、水産業及び漁村の振興に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 (1) 水産業及び漁村の振興に関する施策の基本的な方針

 (2) 水産業及び漁村の振興に関する目標

 (3) 前2号に掲げるもののほか、水産業及び漁村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 知事は、基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、市町、水産業者及び水産団体並びに県民の意見を反映するために必要な措置を講ずるものとする。

4 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

5 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。

 (持続可能な水産資源の管理)

第9条 県は、水産資源の持続可能な利用に向けた管理を図るため、水産資源の評価に基づく漁獲可能量による資源管理の推進、水産資源の状態を的確に把握するためのモニタリング及び管理手法の開発、放流対象魚種の種苗生産技術の開発、放流手法の向上等に必要な施策を講ずるものとする。

 (養殖漁業の更なる発展)

第10条 県は、本県の養殖漁業の更なる発展を図るため、新たな養殖魚種の開発による魚種の多様化、研究開発による養殖技術の向上、魚病及び赤潮による被害の軽減、漁業者の意見を踏まえた海面の有効利用の推進等に必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、県産水産物等の付加価値を高め、競争力の強化を図るため、水産物の加工に関する技術の向上の促進、水産物の保管及び加工の用に供する施設の整備の促進、デジタル技術の導入の促進等に必要な施策を講ずるものとする。

 (未来を見据えた水産業に関する技術の研究開発)

第11条 県は、未来を見据えた水産業に関する技術の研究開発の推進を図るため、国、大学、民間企業その他試験研究機関との連携の強化、水産業に応用が可能な技術又は研究を活用した先端的な研究開発の推進、その成果の普及等に必要な施策を講ずるものとする。

 (適切な漁場利用の推進及び漁業秩序の維持)

第12条 県は、適切な漁場利用、水産資源の保存、管理又は秩序ある利用を図るため、漁場に見合った操業体制の確立、漁業の指導監督、潜水器密漁等の撲滅に向けた対策、遊漁に係る秩序の形成その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (海域の特性に応じた漁業振興)

第13条 県は、湾、灘等の海域の特性に応じて、漁業基盤の整備、環境の保全等の漁業振興施策を講ずるものとする。

 (県産水産物等の国内外への販路の拡大)

第14条 県は、県産水産物等の国内外への販路の拡大を図るため、えひめブランドの創出及び付加価値の向上、需要の開拓、6次産業化の推進、輸出の促進のための体制の整備、輸出の円滑化の推進等に必要な施策を講ずるものとする。

 (魚食普及の推進)

第15条 県は、県産水産物等の需要拡大を図るため、県民の日常生活及び水産業者の事業における県産水産物等の率先的な消費及び利用の推進、学校における食育の推進等魚食普及の推進に必要な施策を講ずるものとする。

 (豊かな海づくり)

第16条 県は、本県水産業の持続的な発展を図るため、魚礁及び増殖場の整備、藻場及び干潟の保全及び造成、栄養塩類の管理等の水産動植物の生育環境の保全、改善及び創造、栽培漁業及び資源管理型漁業の推進等豊かな海づくりのために必要な施策を講ずるものとする。

 (環境にやさしい水産業の推進)

第17条 県は、環境にやさしい水産業の推進を図るため、水産業者と連携して、環境に配慮した海面及び内水面の利用の促進、事業活動に伴う廃棄物の循環的な利用の促進等に必要な施策を講ずるものとする。

 (海洋ごみの削減の推進)

第18条 県は、海洋ごみを排出しない水産業の推進に必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、海洋ごみの削減に必要な施策を講ずるものとする。

 (担い手の確保及び育成)

第19条 県は、本県水産業の担い手の確保及び育成を図るため、水産業の魅力の発信、就業希望者の受入環境の整備、労働環境の改善及び安全の確保、多様な人材の就業及び定着の促進等に必要な施策を講ずるものとする。

 (女性の活躍及び男女共同参画の推進)

第20条 県は、水産業及び漁村における女性の活躍並びに男女共同参画の推進を図るため、水産業及び漁村における女性の役割を適正に評価する気運の醸成、水産業及び漁村における女性の意思決定の場への参画、起業及び連携の促進等に必要な施策を講ずるものとする。

 (安定的な漁業経営の育成)

第21条 県は、安定的な漁業経営の育成を図るため、漁業経営を支える制度資金の充実、漁船その他の施設の高度化、事業の共同化及び拡大の促進、漁業者の経営管理能力の向上等に必要な施策を講ずるものとする。

 (水産業協同組合の経営の安定)

第22条 県は、水産業協同組合の経営の安定を図るため、適正な事業運営の促進、組織及び事業の強化及び充実、合併等による再編の促進等に必要な施策を講ずるものとする。

 (水産業の基盤の整備及び強靱(じん)化)

第23条 県は、災害に強く生産性が高い水産業の構築を図るため、漁港及び漁村の防災及び減災対策、漁港、漁場、養殖施設及び流通加工施設の整備等に必要な施策を講ずるものとする。

 (漁村の振興)

第24条 県は、活力ある漁村の構築を図るため、漁村の魅力発信による交流人口の拡大、海及び漁村の地域資源の活用の促進、水産関連施設の整備、水産業及び漁村が有する文化の継承、景観及び環境の保全、水産業及び漁村と観光業との連携の強化の促進、遊漁その他の余暇活動に係る秩序の形成等に必要な施策を講ずるものとする。

 (内水面漁業の維持及び発展)

第25条 県は、内水面漁業の維持及び発展を図るため、内水面における水産資源の保全及び活用並びに調査及び研究、内水面における漁場環境の保全及び管理並びに調査及び研究、遊漁その他の余暇活動に関する情報の提供等に必要な施策を講ずるものとする。

 (県民の理解の促進)

第26条 県は、水産業及び漁村の振興並びに豊かな海づくりに関する県民の理解の促進を図るため、県民への情報の提供、学習機会の充実、魚食普及の推進、地産地消の推進、都市と漁村の交流の促進等に必要な施策を講ずるものとする。

 (財政上の措置)

第27条 県は、水産業及び漁村の振興に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 (施策の実施状況の公表)

第28条 知事は、毎年度、水産業及び漁村の振興に関する施策の実施状況を公表するものとする。

   附 則

1 この条例は、公布の日から施行する。

2 この条例の施行の際現に策定されている水産業及び漁村の振興に関する事項を定めた県の計画は、第8条第1項の規定により策定された基本計画とみなす。


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