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持続可能で強固な食料供給基盤の確立を求める意見書
第394回(令和7年12月)定例会
提出議案【議員提出の部】
持続可能で強固な食料供給基盤の確立を求める意見書
政府は、昨今の我が国の農業をめぐる大きな情勢変化を踏まえ、食料安全保障の確保を目的に、食料・農業・農村基本法の改正や新たな食料・農業・農村基本計画を策定するとともに、初動5年間を「農業構造転換集中対策期間」と位置付け、施策を集中的に実行するとしている。
生産現場では、生産資材価格が高止まる一方、多くの品目において価格への転嫁は十分追い付いておらず、自然災害も激甚化・頻発化する傾向にあるなど、厳しい状況が続いている。また、国際的にも、政治・経済情勢の一層の不透明化、気候変動、世界的な人口増加等の複合的なリスクが顕在化している。
こうした中、持続可能な農業を実現していくため、農業者が将来展望をもって営農を継続できる環境の整備も含め、改正基本法及び新たな基本計画の実効性を確保するための万全な施策を講ずるとともに、食料安全保障の確保に向けた実践の取組を強力に推進することが不可欠である。
よって、国においては、農業者が将来展望をもって営農を継続できるよう、次の事項について特段の措置を講ずるよう強く要望する。
記
1 改正基本法及び新たな基本計画の実効性を確保し、食料安全保障の確保を図るため、令和8年度当初予算に加え、「農業構造転換集中対策」の実施に必要な予算の別枠確保をはじめ、「食料安全保障強化政策大綱」や「総合的なTPP等関連政策大綱」に係る十分な予算の確保等により、農業関連予算総額を抜本的に拡大すること。
2 経営所得安定対策については、生産資材価格の高騰への影響緩和対策が改正基本法に位置付けられた中で、現行の経営所得安定対策にコストの高騰に着目した仕組みを新設するなど、既存のセーフティネットを組み合わせても補いきれない生産資材価格の高騰に対応しうる対策を措置すること。
3 農業関係人口の拡大と既存の農業経営を次世代に継承していくため、農業用機械・施設等の導入や更新に対する支援措置を講じること。特に、スマート農業の推進に資するものや汎用性の高い機械等も補助の対象とすること。
4 肥料・飼料・燃油など様々な生産資材価格が高止まりする中で、県・市町が地域の実情に応じて必要な事業を実施できる「重点支援地方交付金」を引き続き措置・拡充すること。
5 老朽化する共同利用施設等の再編集約・合理化など、産地の構造転換に向け、「新基本計画実装・農業構造転換支援事業」等に係る必要かつ十分な予算を確保するとともに、都道府県負担のない補助率の引き上げや手厚い地方財政措置など、これまでとは別次元の対策として措置すること。
6 農道及び水路の老朽化が進行し、その機能を十分に果たせず、陥没や漏水などが発生していることから、農道・水路の維持及び迅速な機能回復に対する支援措置の継続的な実施と十分な予算措置を講じること。
7 令和9年度以降の水田・畑作政策の見直しに当たっては、生産現場の課題・要望が適切に政策に反映されるよう、関係者からの十分な意見集約の機会を確保すること。また、令和9年度の作付け判断や営農準備の期間を十分に確保するため、令和7年度末までに新たな政策の方針や品目別の支援内容を示すこと。
8 令和8年度以降の畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)単価の見直し等に当たっては、畑作物の生産性向上・増産に向けて、生産費の高止まり等の状況を十分に考慮すること。
9 配合飼料価格安定制度については、現行の影響緩和機能を堅持すること。
10 果樹(かんきつ)生産の維持・拡大に向け、生産基盤の強化が行われるよう、改植・新植や労働力確保等に対する支援を拡充し、万全な予算を確保すること。また、果樹(かんきつ)の新規就農の障壁となっている出荷調整作業場の確保に向け、新たな支援策を講じること。
11 有害鳥獣による被害の抑制と発生防止のため、「鳥獣被害防止総合対策交付金」の継続的な実施と十分な予算措置を講じるとともに、ICTの活用等による捕獲強化、捕獲個体の処理施設の整備、侵入防止柵の効果的な設置、効果的な捕獲等を促進する専門家の育成など、鳥獣被害防止対策に係る事業を強化すること。
12 高温障害等の異常気象に伴う生育障害や収量・品質の低下等の影響が甚大化する中、新品種の開発・普及や遮光資材・かん水等の栽培技術の導入促進など、気候変動対策を抜本的に強化すること。
13 農家の負担軽減と農地制度に対する信頼を確保するため、農業・農村現場の実態を踏まえ、農地制度(農地中間管理機構を介しての賃借権の設定等)が適正に運用されるよう見直すこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月17日
愛媛県議会議長 福羅 浩一
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
財務大臣
農林水産大臣
内閣官房長官

