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最低賃金の引上げに伴う中小企業に対する支援の拡充を求める意見書
第393回(令和7年9月)定例会
提出議案【議員提出の部】
最低賃金の引上げに伴う中小企業に対する支援の拡充を求める意見書
先月5日までに、各都道府県の労働局に設置された地方最低賃金審議会による今年度の地域別最低賃金の改定額に係る答申が全て取りまとめられた。愛媛県では、現在の956円から、国の中央最低賃金審議会が示した目安である63円に14円上乗せした、77円増の1,033円となるなど、39道府県で目安額を上回り、初めて全都道府県で1,000円を超えたほか、全国平均が昨年度の1,055円から過去最大の66円増の1,121円となった。人口減少に悩む地方においては、地域間格差を是正して県外への人材流出を防ぐ観点が昨年以上に重視された結果として、過去に例のない高水準の引上げが相次いだ。
食料価格や燃料費、光熱水費など、歴史的な物価高騰が続く中、最低賃金の大幅増が労働者にもたらすメリットとして、自身の給与が上がり収入が増えることで生活環境が安定し、経済的不安が軽減されることに加え、仕事への意欲やモチベーションが向上するほか、待遇改善を感じることで会社への愛着や帰属意識が高まり、企業に定着しやすくなることなどが期待できることから、今回の引上げを高く評価する。
しかしながら、企業にとっては、人件費負担が増加することになるため、企業の経営や採用活動、設備投資、雇用等への影響に留意する必要がある。特に、人件費の増加分を価格転嫁できずに苦しむ中小企業・小規模事業者の経営に深刻な打撃を与えることが懸念されており、経営悪化による廃業等を危惧し、支援を望む地方の中小企業経営者の切実な声を聞くことも少なくない。
国は、いわゆる骨太の方針2025において、減税政策よりも賃上げ政策こそが成長戦略の要という基本的考え方の下、物価上昇を上回る賃上げの普及・定着を図るため、中小企業・小規模事業者への賃上げ支援施策を総動員することを表明しているが、企業の人件費負担増による経営の悪化は、労働者にとっても失業リスクが高まるおそれがあることから、賃上げの負担が大きい中小企業への大胆な支援は欠かせない。
よって、国においては、次の事項について措置されるよう強く要望する。
記
1 中小企業・小規模事業者に対する賃上げ支援補助金を拡充するとともに、迅速に執行すること。
2 賃上げ促進税制の適用要件の緩和及び手続きの簡素化を行うこと。
3 社会保険料負担軽減策を検討・導入すること。
4 企業間の取引における適正な価格転嫁を徹底し、監視強化を図ること。
5 地域ごとの経済状況に応じた弾力的な支援措置を実施すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月6日
愛媛県議会議長 福羅 浩一
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣
経済産業大臣
内閣官房長官
経済再生担当大臣
賃金向上担当大臣
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