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愛媛県の未来を創る農業・農村振興条例

ページID:0014466 更新日:2023年11月14日 印刷ページ表示

 愛媛県は、県土の7割を林野が占め、リアス海岸や多数の島々もあり、複雑な地勢を有している。本県の農業及び農村は、たゆまぬ努力と創意によりこのような農業経営上の不利な条件の中、かんきつ類やはだか麦の生産量を日本一とし、また、豚の飼養頭数も中四国一とするなど、それぞれの地域において、固有の農産物を生産し、その営みを通じて、県土の保全、水源の涵(かん)養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等の機能を発揮することにより、県民生活を豊かで充実したものにしてきた。
 しかしながら、少子高齢化の進行、人口減少、農業の担い手の不足、輸入農作物の増加、農地の荒廃など、本県の農業及び農村を取り巻く情勢は極めて厳しいものがある。一方で、令和2年に新型コロナウイルス感染症が世界規模でまん延したことにより、安全で安心な国産農産物の価値及び国内生産の重要性が改めて認識されている。
 このような状況の中、本県の基幹産業である農業及び農村が持続的に発展していくためには、経営規模又は家族若しくは法人の別を問わない多様な担い手の確保や育成、農地の集積や集約化、先端技術を活用したスマート農業の推進等により、経営の安定や生産性の向上を図り、持続可能な農業経営を確立させるとともに、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献している農業及び農村の重要性に鑑み、活力ある農業と豊かな農村社会の実現に取り組む必要がある。
 さらに、本県の農業に甚大な被害を及ぼした平成30年7月豪雨による災害の経験を踏まえ、生産性が高く災害に強い農地に再生する再編整備など生産基盤の強靱(じん)化に取り組むとともに、自然災害等のリスクに備え、農業保険や事業継続計画の普及などにも取り組む必要がある。
 ここに、私たちは、農は国の基であるとの認識を共有し、本県の農業及び農村の持続的な発展を図り、愛媛の豊かな未来を創るため、この条例を制定する。
 (目的)
第1条 この条例は、農業及び農村の振興に関する基本理念を定め、県の責務、市町との連携等並びに農業者、農業関係団体、食品関連事業者及び県民の役割について明らかにするとともに、農業及び農村の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、当該施策を総合的かつ計画的に推進し、もって本県の農業及び農村の持続的な発展並びに県民の豊かな暮らしの実現に寄与することを目的とする。
 (定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 (1)農業関係団体 農業委員会ネットワーク機構、農業協同組合、農業協同組合連合会(農業協同組合中央会を含む。)、農業共済組合、土地改良区、土地改良事業団体連合会その他農業に関する団体をいう。
 (2)食品関連事業者 農産物に係る食品の製造、加工、流通又は販売その他の事業活動を行う事業者をいう。
 (3)農業及び農村の有する多面的機能 県土の保全、水源の涵(かん)養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の農業及び農村の有する多面にわたる機能をいう。
 (4)地産地消 県産農産物及びその加工品(以下「県産農産物等」という。)を県内で消費することをいう。
 (5)えひめブランド 県産農産物等であって、高品質であること等の特性により消費者に信頼感等を与えるものをいう。
 (6)環境にやさしい農業 環境への負荷の低減に配慮し、持続可能な生産活動を行う農業をいう。
 (7)有機農業 化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。
 (8)中山間地域等 山間地及びその周辺の地域その他の地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域をいう。
 (基本理念)
第3条 農業及び農村の振興は、次に掲げる事項を基本として行われなければならない。
 (1)地勢、気候等の多様な地域の特性に応じ、収益性の高い、安定的な農業経営が確立されるとともに、担い手が確保され、将来にわたって農業が持続的に営まれること。
 (2)安全で安心かつ高品質な農産物の安定的な生産及び供給並びに消費者の需要の動向に即した農業の健全な発展に資すること。
 (3)農村が果たしている農業の持続的な発展の基盤たる役割が適切かつ十分に発揮されること。
 (4)農業及び農村の有する多面的機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されること。
 (県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、農業及び農村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、前項の施策を策定し、及び実施するに当たっては、国、市町、農業者、農業関係団体及び食品関連事業者その他関連事業者との連携に努めるものとする。
 (市町との連携等)
第5条 県は、市町が実施する施策との整合を図るため、市町と情報交換を行う等緊密に連携するとともに、助言その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
 (農業者の役割)
第6条 農業者は、自らが安全で安心かつ高品質な農産物の生産及び供給並びに活力ある農村づくりの主体であることを認識し、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。
 (農業関係団体の役割)
第7条 農業関係団体は、基本理念にのっとり、農業及び農村の振興を図り、自らの機能の強化に努め、農業者の経営の安定及び生産の支援、県産農産物等の販路の開拓並びに食品関連事業者その他関連事業者との連携に努めるものとする。
 (食品関連事業者の役割)
第8条 食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たり、県産農産物等の積極的な利用、消費の拡大及び付加価値の創出に努めるものとする。
 (県民の役割)
第9条 県民は、基本理念にのっとり、農業及び農村の有する食料その他の農産物の供給の機能並びに農業及び農村の有する多面的機能の重要性について理解を深め、地産地消等の取組を通じて農業及び農村を支援するとともに、県が行う農業及び農村の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
 (基本計画)
第10条 知事は、農業及び農村の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、農業及び農村の振興に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。
2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
 (1)農業及び農村の振興に関する施策の基本的な方針
 (2)農業及び農村の振興に関する目標
 (3)前2号に掲げるもののほか、農業及び農村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 知事は、基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、市町、農業者、農業関係団体及び食品関連事業者その他関連事業者並びに県民の意見を反映するために必要な措置を講ずるものとする。
4 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
5 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。
 (農業経営の安定等)
第11条 県は、農業経営の安定及び多様な発展を図るため、価格対策の充実、農業保険への加入の促進、生産の組織化その他必要な措置を講ずるものとする。
 (農地の有効利用等)
第12条 県は、農業生産活動に必要な農地の確保及び有効利用を図るため、農地の集積及び集約化、遊休農地の利用の促進、荒廃農地の発生の防止等に必要な施策を講ずるものとする。
 (生産基盤の整備、保全及び強靱(じん)化)
第13条 県は、農業の生産性の向上、農産物の生産の安定並びに農業及び農村の有する多面的機能の適切かつ十分な発揮を図るため、農地、農業用用排水施設、農道等の生産基盤の計画的な整備、保全及び強靱(じん)化に必要な施策を講ずるものとする。
 (担い手の確保及び育成)
第14条 県は、農業の担い手の確保及び育成を図るため、経営規模の大小等にかかわらず、意欲ある農業者、集落営農組織(集落を基礎とした農業者の生産組織をいう。)、新たに農業に就業しようとする者等に対し、生産技術の習得及び向上、経営管理能力の向上、経営の法人化等に必要な施策を講ずるものとする。
2 前項に規定するもののほか、県は、農業経営における労働力の確保等に必要な施策を講ずるものとする。
 (女性の活躍の推進)
第15条 県は、女性の農業及び農村における活躍を推進するため、女性農業者の経営及び地域活動への参画、連携の促進等に必要な施策を講ずるものとする。
 (県産農産物等の生産の振興、付加価値の向上及び販路の拡大のための措置)
第16条 県は、県産農産物等の生産の振興、付加価値の向上及び販路の拡大を図るため、次に掲げる事項について必要な措置を講ずるものとする。
 (1)消費者の需要の動向に即した県産農産物等の生産、加工、流通等を安定的かつ効率的に行うことができる体制の構築に関すること。
 (2)えひめブランドの創出及び産地の育成に関すること。
 (3)食品関連事業者その他関連事業者との連携又は県産農産物等の生産及びその加工若しくは販売を一体的に行う事業活動により、商品開発等(商品の開発、生産若しくは需要の開拓又は役務の開発、提供若しくは需要の開拓をいう。)を行う取組に関すること。
 (4)県産農産物等の国内外への販路の拡大に関すること。
 (5)農業者と食品関連事業者その他関連事業者との連携に関すること。
 (6)前各号に掲げるもののほか、県産農産物等の生産の振興及び付加価値の向上に関すること。
 (環境にやさしい農業の推進等)
第17条 県は、環境にやさしい農業を推進するため、有機農業をはじめとする化学的に合成された肥料及び農薬等を低減した農業の推進並びにその農産物の認証、消費者の環境にやさしい農業についての理解の促進等の施策を講ずるものとする。
 (主要農作物の種子の生産等)
第18条 県は、主要農作物(稲、はだか麦、小麦及び大豆をいう。)の優良な種子の生産、供給及び普及を促進するため、必要な施策を講ずるものとする。
 (鳥獣による被害の防止)
第19条 県は、農業及び農村の持続的な発展を図るため、有害鳥獣の捕獲、鳥獣による被害の防除、鳥獣による被害を防止するための地域の体制づくりその他の必要な施策を講ずるものとする。
 (技術及び知識の向上)
第20条 県は、農業及び農村の振興に資する技術及び知識の向上を図るため、農産物の高品質化、新品種の開発、生産性の向上等に関する研究開発の推進、情報通信技術その他の先端技術の活用、大学及び民間等との連携の強化その他の必要な施策を講ずるとともに、その成果の普及に努めるものとする。
 (中山間地域等における農業生産活動の振興)
第21条 県は、中山間地域等に適した農業生産活動が継続的に行われるよう生産基盤及び定住環境の整備その他農業の生産条件に関する不利を補正するために必要な施策を講ずるものとする。
 (農業及び農村に関する県民の理解の促進)
第22条 県は、農業及び農村の果たす役割に関する県民の理解の促進を図るため、県民に対する農業及び農村に関する情報の提供、地産地消及び食育の推進、食文化の維持保存、都市と農村の交流等の県民と一体となって取り組む施策を講ずるものとする。
 (財政上の措置)
第23条 県は、農業及び農村の振興に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
 (施策の実施状況の公表)
第24条 知事は、毎年度、農業及び農村の振興に関する施策の実施状況を公表するものとする。
 附則
1 この条例は、令和3年4月1日から施行する。
2 この条例の施行の際現に策定されている農業及び農村の振興に関する事項を定めた県の計画は、第10条第1項の規定により策定された基本計画とみなす。


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