えひめのお魚事典

マダイ

Pagrus major

マダイ

マダイ(真鯛)は、スズキ目タイ科マダイ属の海産魚で、学名は Pagrus major です。標準和名のマダイの由来は、体形の「平たい」からタイ、またタイの中のタイという意味でマダイと呼ばれるようになったという説のほか、「めでたい」から転じたなど諸説あります。

また、英名は Red seabream で、赤いタイという表現になっています。

マダイは北海道から九州、沖縄の日本沿岸(奄美、沖縄では少ない)、朝鮮半島沿岸、東シナ海、渤海、黄海に分布し、水深約30~200mの岩礁域、砂れき底、砂底に生息しています。一方、南半球には近縁種のゴウシュウマダイ Pagrus auratus が生息していますが、形態だけでは区別するのが難しいほどマダイによく似ているため、両種を別々の種ではなく亜種あるいは同種とする研究者もいます。

マダイの産卵期は早春から夏で温かい海域ほど早く、瀬戸内海東部では4~5月、中央部で5~6月が盛期です。産卵場所は沿岸の浅海域、多回産卵で産卵期間中に5~10回産卵し、1回の産卵数は15万~25万粒です。受精卵は約1.2mmの分離浮遊卵で、2日程度でふ化し、仔魚は浮遊生活を送りながら動物プランクトンを食べて成長し、ふ化後1か月で全長10mmになって沿岸の浅場や藻場で底生生活に移行します。稚魚期はカイアシ類やヨコエビ類などの小型甲殻類を食べて成長し、それとともに徐々に深みに移動します。成魚になるとゴカイ類、エビ・カニ類、小型ハゼ類などを食べます。1歳で体長10cm前後、2歳で15~20cm、3歳で20~30cm、10歳で50~60cmに成長し、成熟は3歳からで寿命は15~20年とされています。

体表

体形は楕円形で強く側扁し、体高の高い典型的なタイ形です。体色は鮮赤色で、腹部は淡紅色、体側に小さい青緑色点が不規則に数列散在しています。

写真1:チダイ

出典:ユジダル WEB魚図鑑

鰭(ひれ)

背鰭は1基で12棘10軟条、臀鰭は3棘8軟条で、棘はいずれも硬く鋭くなっています。尾鰭は大きく二叉し後縁には黒い縁取りがありますが、近縁種のチダイやキダイにはなく、これで両種を区別することが可能です。

頭部

頭は大きく顎は強靭で、上下の顎前部には2、3対の鋭い犬歯があり、その両側には2列のしっかりとした臼歯があります。この臼歯の有無により、臼歯がないキダイと区別できます。

写真2:マダイの歯

出典:横浜丸魚株式会社

マダイと人の歴史

日本各地の縄文遺跡からスズキやカレイなどとともに、多くのマダイの骨が出土していて、太古の時代から日本人はマダイを好んで食べていたと考えられます。特に青森県の三内丸山遺跡から出土した骨には、バラバラではなく魚の形のままのものもあり、「三枚おろし」にして調理したのではないかと推測されています。

マダイは現代でも祝い事や神事で使われるめでたい魚ですが、奈良時代の古事記、万葉集、日本書紀には、すでに鯛に関する記述があるほか、平安時代には朝廷の御料に使われていて、鯛は古来より特別な魚とされていたようです。鎌倉時代になると貴族社会から武家社会に移り、戦いに勝つための縁起がより重要になり武士にとって鯛はさらに大切な存在となりました。

江戸時代になると徳川将軍家や大名屋敷でも盛んに鯛が食べられ、全国各地から将軍家などに鯛が献上されました。魚島(現愛媛県上島町)周辺や来島海峡(今治市)はマダイの好漁場で、特に魚島近海で獲れる鯛は「魚島鯛」と呼ばれ、今治藩が鯛奉行を島に派遣して監視するほど貴重なものでした。水揚げされた鯛は、干し鯛や塩辛、からすみに加工され、幕府に献上されていました。その後、船に活魚槽を設けた「活船」の登場により活きた鯛を畜養したり輸送したりすることができるようになり、新鮮な鯛が江戸に集まるようになりました。これとともに贅沢にあこがれた庶民も、祝いの席で鯛を食べられるようになり、この習慣が現在につながっています。

タイ科魚類の性転換

魚類の中にはベラ類やクマノミ類など500種類以上の魚種が性転換することが知られていますが、日本周辺に生息する13種のタイ科の魚たちもその仲間です。マダイは1歳の頃はすべての個体が卵巣組織を持つ雌ですが、2歳頃には約半数の個体で卵巣の腹側に精巣組織ができ両性生殖腺になります。ただ、これは成熟前の幼魚期における一時的な雌雄同体で、3歳になると2歳で精巣組織ができた個体がそのまま雄となり、雌雄の性比が1対1となって3~4歳には成熟し繁殖活動を開始します。

このように雌から雄に性転換するのはマダイ、チダイ、キダイ、ヒレコダイなど7種いますが、このうちヒレコダイの性転換には大きな特徴があります。ヒレコダイは1尾の雄と複数の雌が群れで生活していますが、群れを率いる雄がいなくなると、最も大きな雌が性転換して雄になります。一方、タイ科の魚の中でも体色の黒いクロダイ、キチヌ、ヘダイなど6種は、マダイなどとは逆に雄から雌に性転換します。性転換の方向やタイミングが魚種によって異なっていますが、これはそれぞれの魚の産卵生態や生活環境のなかで、より多くの卵を産み、少しでも多くの子孫を残していくための戦略と考えられています。

写真3:ヒレコダイ

出典:ym WEB魚図鑑