えひめのお魚事典
クエ
Epinephelus bruneus
クエ(九絵)はスズキ目ハタ科マハタ属に分類され、学名は Epinephelus bruneus です(25年以上前では、E.moara とされていました)。英名は、longtooth grouper で、「長い歯のハタ」の意味になり、鋭い歯から名づけられているようです。名前の由来は、成魚の体全体が暗褐色で汚れた感じがあることから「垢穢(くえ)」となった説や、幼若魚の体表に不規則な斑紋があることから「九の絵」とつけられた説などがあります。
日本沿岸に生息する大型の温帯性ハタとして知られ、太平洋側で関東以南、日本海側で石川県以西の沿岸・東シナ海・南シナ海に分布します。他のハタ類と同様に雌性先熟型の性転換をします。漁法として釣りや延縄で漁獲されますが、マハタと同様に漁獲量は多くありません。ハタ類の中で最も美味とされ、日本産ハタ類の中では市場で最も高価格で取り扱われています。近年では、愛媛県・長崎県・和歌山県などで養殖が行われています。旬は秋から冬。身は白身で、フルコースで楽しめるほど様々な料理法に向きます。鍋料理が有名で、九州の「アラ鍋」はクエのことです。
体表
体形は楕円形で側扁します。同属のマハタに比べるとやや細長い体です。幼若魚の体色は灰褐色で、体側に6本の暗褐色の斜走帯があります。この斜走帯は成長に伴って不明瞭になり、大型の成魚では一様に暗褐色になります。
写真1:クエの若魚
写真提供:愛南町・中田親氏
鰭(ひれ)
背鰭には11棘、尻鰭には3棘あり、その棘状は太く鋭くなっており、マハタと同様です。尾鰭の後縁も丸くなっていますが、マハタと異なり白く縁取られてなく、マハタと区別するポイントになります。
写真2:クエの尾鰭
頭部
頭と口は大きく、両顎に鋭い歯が並んでおり、これが英名の[longtooth]の由来となっています。前鼻孔と後鼻孔は、マハタとは異なり、ほぼ同じ大きさです。
写真3:クエの顎に並んだ鋭い歯
クエは博打のような“幻の高級魚”
クエはハタの仲間では最も美味しく、冬にはひときわ旨いとされ、鍋料理は食通に人気があります。愛媛県では宇和海南部の愛南町沿岸などで漁獲されますが、めったに獲れることのない魚で、漁師仲間では博打のような“幻の高級魚”と言われ、愛南漁協の魚市場におけるクエの年間取扱量は2,000kgに満たない希少な魚で、産地市場での取引価格が3,000円を超える高級魚です。
愛南漁協魚市場(愛南漁協本所深浦地方卸売市場)におけるクエの取扱量と単価
| 区分 | 月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成26年 | 取扱量 | 299 | 117 | 64 | 32 | 30 | 122 | 24 | 59 | 48 | 47 | 402 | 488 | 1,732 |
| 単価 | 1,643 | 1,686 | 2,216 | 1,088 | 2,762 | 2,568 | 2,076 | 1,913 | 2,208 | 3,102 | 2,478 | 2,163 | 2,152 | |
| 平成27年 | 取扱量 | 236 | 202 | 66 | 37 | 61 | 63 | 41 | 109 | 55 | 251 | 305 | 369 | 1,792 |
| 単価 | 3,008 | 1,520 | 1,537 | 1,887 | 1,788 | 2,082 | 2,369 | 2,678 | 2,237 | 4,074 | 2,886 | 3,301 | 2,821 | |
| 平成28年 | 取扱量 | 203 | 172 | 117 | 122 | 67 | 27 | 29 | 75 | 243 | 241 | 289 | 328 | 1,912 |
| 単価 | 1,668 | 1,512 | 2,034 | 787 | 1,123 | 3,963 | 2,444 | 1,829 | 3,855 | 4,552 | 3,629 | 3,745 | 2,945 |
資料提供:愛南漁業協同組合/単位:取扱量(kg)、単価(円)
クエの生態
外洋に面した水深50m程度までの沿岸の岩礁に生息します。昼間は岩棚などの巣穴に潜み、一般に単独行動で薄暮時に餌を求めて活動します。
産卵期は5~7月で、1尾の雌が1シーズンに数十~数百万の卵を産みます。卵は球形で、直径0.8~0.9mmの比較的小さな分離浮性卵です。水温24℃では受精後28時間程度でふ化します。ふ化直後の仔魚は全長約1.8~2.1mmです。他のハタ類と同様に、一時的に仔魚の背鰭棘と腹鰭棘が伸長する特異な発生を経て、ふ化後50日頃の約30mmでほぼ成魚の体形になります。養殖例では1才で100g、4才半で2.5kgになります。クエも他のハタ類と同様に、雌性先熟型の性転換を行い、飼育下では6~7才以上の体重4kg前後で雌として成熟します。さらに大きくなると雄に性転換する個体が出始めるようです。
食性は肉食で、魚類・甲殻類・イカやタコなどを呑み込むように食べます。最大は全長1.5m、体重100kgに達します。寿命は20~30才と推定されています。
写真4:クエの仔魚(ふ化後18日目、全長8mm)
写真提供:愛媛県水産研究センター
写真5:クエの仔魚(ふ化後44日目、全長23mm)
写真提供:愛媛県水産研究センター
