えひめのお魚事典
キジハタ
Epinephelus akaara
キジハタ(雉子羽太)は、スズキ目ハタ科マハタ属の海産魚で、学名は Epinephelus akaara です。代表的な英名は Redspotted Grouper で、赤い斑点のハタという表現です。和名のキジハタは、体表が雉のような色模様であることが由来といわれています。また、近畿・瀬戸内でアコウ・アコ、福岡・長崎などでアカアラ、山陰でアカミズなど、多くの地方名があります。これらのうち、アカアラという呼び方は種名の akaara にも使われていますが、これはシーボルトが長崎からオランダに持ち帰ったキジハタの標本をもとに、ライデン博物館の二人の研究者によって学名がつけられたことによります。
キジハタは、青森県以南の日本海・相模湾以南の太平洋・瀬戸内海・朝鮮半島南部・台湾・中国の沿岸に分布します。水深5~25mの岩礁域に生息し、成魚は大きい個体で全長50cmに達しますが、ハタ類のなかでは中小型の種になります。産卵期は春~夏で、瀬戸内海での盛期は8月です。卵は1日程度でふ化した後、海中を浮遊しながら動物プランクトンを食べて成長し、全長3cm前後で底生生活に移行します。その後は岩場でエビ・カニ類や魚類を捕食するようになりますが、定着性が強く大きな移動・回遊はしないとみられています。
また、キジハタは全長25cm前後で雌として先に成熟し産卵した後、全長30cm前後で性転換して雄となって生殖に関与する雌性先熟で、このような繁殖形態はハタ科魚類の多くにみられます。
体表
体形は楕円形で側扁し、体表は小さな櫛鱗で覆われ、体色は褐色で赤橙色の斑紋が多数分布します。背鰭基部の中央には大きな1個の黒色斑がありますが、形態のよく似た近縁種のノミノクチは背鰭基部中央から後ろに3個の黒色斑があり、これで見分けることが可能です。
写真1:ノミノクチ
出典:くにひろ WEB魚図鑑
鰭(ひれ)
背鰭は1基で基底が長く11棘15~17軟条、臀鰭は3棘8~9軟条で、尾鰭の後縁は丸い形になっています。
頭部
口は大きく上顎端は眼の後端に達します。その眼は緑色です。鰓蓋の後端には等間隔で3本の棘がありますが、中央の1本を除いて皮下に埋もれていることが多く、見えにくくなっています。
写真2:鰓蓋の棘
まぼろしの魚「アコウ」
キジハタはハタ類のなかで最も味がよいとされ、「冬のフグ、夏のアコウ」とたとえられる高級魚で、刺身や煮付けなどで食べられます。特に関西や瀬戸内などで評価の高い魚で、釣りや刺網で漁獲されるほか、釣り人にも人気がありますが、獲れる量が少なかったため「まぼろしの魚」といわれていました。そのため、キジハタ資源を増やすことを目的に、昭和50年代から全国各地の水産研究機関で稚魚の生産技術の研究が行われてきました。その結果、愛媛県水産研究センター栽培資源研究所においても、平成16年以降安定的にキジハタの稚魚を生産することが可能になり、最近では8cm程度の稚魚10~12万尾を毎年、瀬戸内海を中心に放流しています。これに伴って、松山市公設水産地方卸売市場におけるキジハタの取扱量も、平成10~20年の4~10トンから、平成21年以降は17~23トンに増加しています。
また、キジハタは養殖もされていますが、海水温が下がる冬を中心に成長が停滞し、出荷サイズまで3~4年と長い期間が必要なため、マダイやブリのような海面養殖は盛んではありません。一方で、低水温期に飼育水を加温して成長を促進させ、2年程度で出荷サイズに育成することを目的とした、閉鎖循環(海水を循環ろ過して再利用する)式による陸上養殖の技術開発が各地で進められています。
性転換する魚
は虫類や哺乳類など陸上の動物では、生まれた後に性転換するものはみられませんが、魚類では500種以上が性転換し、その8割以上がキジハタと同じ雌性先熟の性転換です。大きな雄がハーレムを形成する一夫多妻の魚種は、小さい雄では繁殖機会がないので、体が小さいときには先に雌として産卵し、体が大きく成長してから雄として繁殖に関わる方が、一生の間に残せる自分の子孫が多くなります。このような雌性先熟の性転換をする魚種はハタ類のほか、ベラ類・ブダイ類などがあげられます。
一方、1対1のペアで繁殖行動をするクロダイやコチ・クマノミ類などは、雄性先熟の性転換をします。小さい雄でも繁殖の機会があるため、小さいときは雄として繁殖に関与し、大きくなってから雌として多くの卵を産むことで、自分の子孫を多く残すという繁殖戦略です。
このように、魚の性転換は個体間の社会関係によって起こりますが、社会的地位の変化によって双方向に性転換する種もいます。琉球列島などに生息し、他の魚の寄生虫を食べることで掃除魚として知られるホンソメワケベラは雌性先熟ですが、雌から性転換した雄を人為的に2尾だけにすると、小さい方の個体が雌にもどる性転換が起こります。
写真3:ホンソメワケベラ
出典:りえ WEB魚図鑑
