えひめのお魚事典

イサキ

Parapristipoma trilineatum

イサキ

イサキ(伊佐木)は、スズキ目イサキ科イサキ属の海産魚で、学名は Parapristipoma trilineatum です。和名のイサキは、磯(いそ)の魚(き)から転化したという説など、名前の由来には諸説あります。また、背鰭の形が鶏のとさかに似ていることから、イサキは「鶏魚」とも表記され、英名も Chicken grunt と鶏の表現が入っています。

イサキは、新潟県以南の日本海、宮城県以南の太平洋、瀬戸内海、朝鮮半島南部、東シナ海、台湾、中国広東省、福建省などに分布しています。浅海の岩礁域や藻場周辺に生息し、群れを作って行動していますが大きな移動回遊は行いません。産卵期は6~9月で、その盛期は6~7月です。雄と雌が沿岸の静穏域に集まり、ペアとなった雌雄が円を描くように遊泳したあと、水面近くに急浮上し体を反転させて放卵、放精します。受精卵は1日ほどでふ化し、全長2~3mmのふ化仔魚は動物プランクトンを食べて成長します。全長15mmくらいに成長すると成魚とほぼ同じ体形となり、1歳で体長約13cm、2歳で約20cm、4歳で約40cmに成長し、成魚は体長45cmに達します。幼魚期には二枚貝の幼生やアミ類などを餌にしていますが、成魚になるとイワシ類やキビナゴなどの小魚を食べるようになります。

夜行性が強く、昼間は沿岸の藻場や岩礁域周辺で群れを形成して生活していますが、夜になると海面近くにまで浮上して餌を食べます。特に闇夜に活発に行動するため、同じ漁場でも闇夜には月夜の2~3倍のイサキが漁獲されるといわれています。

体表

体はやや細長く側偏し、体色は背側が暗青色ないし黄土色で、腹側が銀白色です。幼魚期には体の側面に3本のくっきりとした茶色い縦縞があり、この姿がイノシシの子供に似ていることから「ウリボウ」などと呼ばれます。その後この縞模様は成長とともに徐々に不明瞭になり、体長25cmくらいで消えます。

写真1:イサキの幼魚

出典:公益財団法人 黒潮生物研究所

鰭(ひれ)

背鰭は1基で13~14棘、16~18軟条で、臀鰭は3棘7~9軟条です。背鰭の棘は、鋭く尖っているので、取り扱う際には手に刺さらないよう注意する必要があります。

頭部

眼の下端は、吻端より下に位置しています。口は小さく、上下の顎に円錐状の歯が並んでいます。鰓蓋の後縁には1本の鋭い棘があります。

イサキと人の歴史

縄文時代後期の鉈切なたぎり洞穴遺跡(千葉県館山市)から、マダイやスズキの骨とともにイサキの骨も出土しています。このことから縄文人もイサキを獲って食べていたと考えられ、昔から日本人はイサキが好きだったようです。江戸時代も広く庶民の間で食べられ、明治時代になると小田原かまぼこの主な原料として大正時代まで使われました。しかし、昭和になるとかまぼこの需要の増加とともに大量に獲れるシログチなどのほかの魚に代わりましたが、最近になって再び小田原でイサキ100%の「いさき蒲鉾」が復活したことがニュースになっています。

現在、イサキは釣り・定置網・はえなわ・底曳網などで漁獲されるほか養殖も行われています。養殖は、成長の速い中国産イサキの種苗を使い、宇和島や八幡浜をはじめとした西日本各地で行われています。刺身・塩焼き・フライ・ムニエルなどで食べられ、年中で最も美味しい時期は脂の乗った産卵期で、梅雨時期と重なるため「梅雨イサキ」あるいは「麦わらイサキ」と呼ばれています。特に、厚みのある皮を炙ると、さらに風味が増し皮と身の間の「皮目」の脂が絶品です。また、幼魚期の呼び名「ウリボウ」や漢字表記の「鶏魚」にちなんで、亥、酉の干支の魚として年末年始に水族館で展示されることもあります。

イサキの骨は硬い

和歌山地方では、イサキの骨が喉に刺さって死んだ鍛冶屋がいたという古い言い伝えから、イサキには「鍛冶屋殺し」という異名が付けられています。この言い伝えからもわかるように、イサキの骨はサケやイワシなどの骨と違って非常に硬いのが特徴です。

これとは別に、魚は硬骨魚類と軟骨魚類の二つのグループに分かれます。硬骨魚類にはマダイやヒラメ、イワシ、ウナギなど多くの魚種が含まれ、世界で2万6,000種以上が知られています。一方、軟骨魚類はサメやエイの仲間で、約970種が含まれます。硬骨魚類は体の骨が真の硬骨で、各骨格は小骨が接合して形づくられていて、頭蓋骨は多数の骨が組み合わさってできています。また、浮き袋を持つこと、鰓孔(えらあな)が左右1対であることなども硬骨魚類の特徴です。これに対して、軟骨魚類の骨は軟骨で、頭蓋骨は1個の軟骨の箱になっていて複数の骨の組み合わせではありません。また、浮き袋がなく、鰓孔は左右数対ずつあります。

これら以外にも両者にはさまざまな違いがあり、軟骨魚類は古生代の魚の形態的特徴を多く備えるため、硬骨魚類より原始的なグループと考えられたこともありました。しかし、軟骨魚類にはいくつかの著しく特殊化した特徴があることから、現在では両者は個別に独自の進化を遂げたと考えられています。