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令和4年度の成果

ページID:0008475 更新日:2023年5月30日 印刷ページ表示

【令和4年度成果】研究分野 A:森林管理・経営、B:木質資源加工利用

表1

予算事項名/試験研究課題名

実施年度 研究分野 目的・概要 主な成果 資料
林業試験研究費 種子の検定と発芽試験 S35~ A  優良な種苗の供給を確保するため、スギ、ヒノキ、アカマツの発芽試験等を行う。  発芽率はそれぞれ次のとおりであった。
  • エリートツリーミニチュア採種園
    内 子 R03スギ 27%
    R03ヒノキ(カメムシ防除無)19%
    川内 R04ヒノキ(サンサンネットあり)52%
  • 普通採種園
    新居浜 R03スギ 15%
    R02+03ヒノキ 7%
  • その他
    混合スギ(1) 18% 混合スギ(2) 16%
    クロマツ 腐敗 アカマツ 腐敗
 
スギ大径材利用技術研究 R3~R5 B  大径原木の価格が適正に評価されるべく新たな利用法を普及させるため、原木の効率的な調達方法を実証し、強度性能を活かした断面積の大きい構造用部材へ利用する方法を開発するとともに、内装材の新たな付加価値として、大気浄化機能を持つ心材部の機能性を明らかにする。  歩留まり向上のため、木材市場において原木強度を測定し、市売り価格へ反映されるか調査した。強度への認知度が低く、金額の変化は見られなかった。
 スギ大径材の新たな構造用材への利用として、接着合わせ材と心去り梁桁材を試作し、製造可能な等級や強度性能の評価を行った。
 
 
スギエリートツリー特性調査試験費 スギエリートツリー特性調査試験 R4~R6 A  スギエリートツリー種苗の普及を推進するため、材質強度の優位性について、幹の応力波伝播速度により検討する。加えて、DNA分析による材質強度の優れた母樹の特定を行い、既存精英樹やエリートツリー系統間の差を明らかにする。  R4年度は予備試験として、ファコップでの応力波伝播速度の計測方法を検討した。検討結果をもとに、スギ大苗を植栽後8年経過した久谷試験地にて従来種苗区、エリートツリー種苗区から各10個体を選び応力波伝播速度を計測した。その結果、エリートツリー種苗区での応力波伝播速度の方が有意に高くなった。また、測定者間による誤差に有意差は見られなかった。  
林業普及指導事業費(林業躍進プロジェクト推進事業費) ドローンを使用した森林施業地の写真測量手法の調査 R3〜R7 A  森林施業地の現地測量係る労務負担を軽減するため、写真測量に関する情報を収集し、現地実証、精度検証を行ったうえで、県内林業関係者(森林組合、林業事業体等)に技術の普及を行う。  ドローンを使用した写真測量の精度を確認するため、ヒノキ3年生の林分に20m×20mの区画を設け、20m、41m、62m、83m、105mの高度で各4回撮影を行い、オルソ化した画像を目視判読して面積を求めた。ドローンは単独測位方式のため写真の位置精度は低いと推定されたが、位置補正は行わなかった。写真測量で得られた面積とレーザー距離計で得られた面積を比較したところ、0.94から1.17倍(平均1.05倍)の差があった。また、面積と飛行高度との関係を調べたところ、相関は認められなかった。
 林業普及指導員巡回研修等において、ドローンを使用した写真測量の手法や、これまでの調査結果について説明を行った。
 
森林計画樹立費 森林資源モニタリング調査 R2~R5 A  スギ・ヒノキ現実林分収穫表の調整、天然更新完了基準の見直しのためスギ・ヒノキ人工林及び皆伐地において現地調査を実施する。  スギ・ヒノキ林分収穫表の修正調査について、西条市の10林分において成長量調査を実施した。天然更新完了基準の現地適合性調査については、大洲市、西予市の15箇所に調査地を設けて調査した。  
新たな森林管理システム推進事業費 携帯型森林GISの構築及び活用に関する調査 R2~R6 A  近年、航空レーザ計測データの解析により、精密な森林情報の整備が進められている。これらの情報を携帯機器と組み合わせて携帯型森林GISを構築し、森林・林業関係者による活用を図ることにより、新たな森林管理システムの推進に資する。  携帯型森林GISの構築が概ね完了したことから、現地で収集した地理情報をパソコンで利用するための森林GISを試作した。GISソフトには「QGIS」を使用し、搭載する地理情報には国・県等から無償で提供されているデータを使用した。範囲は久万高原町全域とした。
 試作した森林GISの評価を得るため、森林局、久万高原森林林業課、中予山岳流域林業活性化センターにおいて操作実演及び意見交換を行った。
 
未来型農林水産研究プロジェクト推進事業費 花粉を出さないスギ新品種高速開発研究 R2~R4 A  スギ花粉症対策のため、無花粉遺伝子を持つ県産精英樹「上浮穴16号」を育種素材として使用し、さらにDNA分析による無花粉個体識別を取り入れ、従来の半分以下の期間で可能な高速育種を実現し、優良無花粉スギ品種を開発する。  令和3年春に行った無花粉遺伝子をヘテロで持つ県精英樹「上浮穴16号」と無花粉スギとの人工交配で得られた種子を播種し、113個体の苗についてDNAマーカー支援選抜法を用いて無花粉スギかどうかの検定を行ったところ、62個体の無花粉個体と51個体のヘテロ個体を選抜できた。  
県産大径材利用拡大事業費 県産材によるツーバイフォー(2×4)工法部材開発研究 R3~R8 B  大径化が進む県内森林資源を活用して、2×8や2×10等の大断面ツーバイフォー部材の製造技術を開発し、外材が占めている同部材での県産材によるシェアの獲得を目指す。
 また、県内JAS認証工場と連携した商品化を目指し、新たな需要を開拓する。
 ヒノキの204、206、208、210を試作し、目視等級による出現割合を確認したところ、204、206、208は大半が特級の格付けを有し、さらに2級以下の格付け要因は節や反りによるものが多いことがわかった。また、210は、錘による変形抑制を行わずに乾燥し製造したところ、多くが反りによって3級以下の格付けとなり、品質向上には適正な乾燥処理が必要であった。
 さらに、部材開発検討委員会を開催し、製材・加工業界と意見交換を行った。
 
CLT建築物建設促進事業費(森林環境税) CLT普及促進情報整備事業(CLT建築物環境評価検証事業) R3~R4 B  県内のCLT建築物における室内環境の情報を収集し、CLT利用の優位性を実証することに加え、CLT使用空間における人の生理・心理評価を行い、この結果を販売促進活動に活用することで、CLT建築物の建設促進を図る。  CLT空間の事務所において、気分状態の評価、脈波・唾液アミラーゼの測定による緊張・リラックス状態の評価、空気質及び温湿度変化の測定を実施した。 昨年度の結果から、CLT空間において生理面、心理面において、ストレスが低下している可能性を示唆する結果を得た。今年度、測定を継続したところ、昨年度から数値に大きな変動は見られず、効果が持続している可能性を示唆する結果を得た。  
造林費 スギエリートツリーによる低コスト造林モデル林実証試験 H26~R5 A  県有林において、エリートツリー大苗を用いて実用林分を造成し、初期成長を調査、下刈省力化に対する効果を検証する。  県下4箇所の試験地のうち、2箇所がエリートツリーの植栽地である。植栽後7~10成長期を経過しているが、各試験地とも第1成長期の樹高および樹高成長量については、エリートツリーと愛媛育種混合苗の間に差は出なかった。第1成長期以降の樹高はエリートツリーが有意に高くなり、久谷試験地では、エリートツリーと愛媛育種混合苗の第9成長期末の材積で約1.4倍の差がつき、初期成長だけでなく、幹材積においても有利性が確認できた。  
鳥獣害防止対策事業費 ニホンジカ被害の防除に関する改良型ツリーシェルターの実証(鳥獣害対策研究開発実証事業) R3~R4 A  ニホンジカの食害防止のために使用される造林用苗木の保護資材の通気性を改良し、食害防止効果、苗木の生育状況を調査する。  試験地は今治市鈍川地区(樹下植栽地)と西予市城川地区(皆伐跡地の再造林地)に設け、苗木をそれぞれ20本植栽後、保護資材を設置した。保護資材は市販品、通気孔を増加した改良型を10本ずつ交互に設置し、温湿度ロガーを用いて市販品及び改良型のそれぞれ2本、及び外気の温湿度を測定した。その結果、西予市城川地区では市販品に比べ改良型内部の温度上昇や乾燥負荷が軽減されている傾向が見られた。  
広域連携型農林水産研究開発事業費 無花粉スギの開発・生産・増殖効率改善試験 R3 A  無花粉スギ品種からの種子生産量の増大・安定供給をはかるため、種子親となる無花粉スギや花粉親となる無花粉遺伝子を有するスギ精英樹等の着花・開花特性、種子生産性に関する特性を把握し、種子形成時期の気象との関係を明らかにする。また、無花粉遺伝子を有するスギ精英樹と特定母樹等を用いた人工交配を行う。  令和4年7月に無花粉遺伝子を持つ愛媛県精英樹及び通常の精英樹6系統、無花粉スギ2系統にジベレリン散布・浸漬処理を行った。
 着花・開花特性:10月及び1月に雄花の着花指数を調査した。着花指数は、上浮穴16号が他の系統と比べて非常に高い指数を示し、花粉親として非常に有用であることが判明した。令和5年2~3月にかけて、雌花の開花フェノロジーの調査を行った。昨年度に引き続き、系統によって開花時期がずれることが確認された。
 種子生産に関する特性:令和4年10月に球果から種子を採取し、充実率、100粒重、発芽率の調査を行った。結果は育種センターに送付し、他のデータとともに解析される予定である。
 人工交配:令和5年2~3月にかけて、無花粉遺伝子を有するスギ精英樹3系統から花粉を採取し、人工交配を行った。人工交配は、無花粉スギ1系統、無花粉遺伝子を有するスギ県精英樹2系統に対して行った。また、環境データを測定した。
 
スギ雄花着花特性検査技術高度化試験 H29~R6 A  幼木へのジベレリン処理による雄花着花量から、成木の自然状態での雄花着花量を推定できる手法を確立し、これにより現在20年以上を要している少花粉スギの育種期間を大幅に短縮する技術を開発する。
 また、既存のヒノキミニチュア採種園の環境と種子生産量の関係を調査し、管理マニュアルを作成する。
 ヒノキミニチュア採種園の母樹にジベレリンペーストを枝の基部に埋設した。ジベレリンに対する薬害及び雄花の着生傾向には系統により強弱があった。また、球果をつけた枝にサンサンネット(赤)、(透明)、寒冷紗の3種類のネットを設置し、カメムシの被害防除を行ったところ、すべてのネットでカメムシの侵入を概ね防ぐことができた。種類によって得られた種子の100粒重や発芽率に有意な差は見られなかったが、赤色ネットでやや発芽率が高くなる傾向が見られた。  
品質・性能を確保した乾燥材の供給に向けた技術資料の作成および普及 R4 B  人工乾燥材の使用者(プレカット、工務店、建築関係者等)と人工乾燥材に求められる品質・性能に関するアンケート調査を行う。また、これまでに得られた調査および試験結果を整理し、適正な乾燥条件について普及する資料を作成し、人工乾燥材生産事業者に対する説明会を開催する。  人工乾燥材の使用者(プレカット、工務店、建築関係者等)に人工乾燥材に求められる品質・性能に関するアンケート調査を実施した。その結果を踏まえ、これまでに得られた調査及び試験結果を整理し、適正な乾燥条件を示す根拠資料を作成した。同資料を人工乾燥材生産事業者に随時配布しており、乾燥材の安定供給を図る資料として普及を図っている。  
構造用製材の含水率の変化が強度に及ぼす影響の検証 R4 B  構造用製材の含水率の変化と強度との関係を明らかにするため、含水率20%の試験材を平衡含水率以下まで乾燥させて加圧試験等を行い、乾燥による耐力の変化を検証するとともに、接合部における耐力変化を検証するための最適な試験方法を検討する。  室内保管での天然乾燥を3か月行い、月に一度含水率の変化、寸法変化、割れ、凹み量について測定を行った。試験体の含水率が高いほど含水率の減少は大きいが、寸法はほぼ変化が見られなかった。また、割れ及び凹み量についてもほとんどの試験体で変化は見られなかった。木口面の割れについては、切断面側がより増加する傾向がみられた。  
20m超スパン対応JIS仕様トラスの継手仕口の開発 R4 B  非住宅建築物の木造化を促進するためには、体育館などの中大規模建築において、より大きな空間を実現できるたトラスの仕様が必要である。
 このため、国産スギ及びヒノキを使用し、20mを超えるスパンを想定したトラスに必要な強度の高い継手や合掌尻仕口の開発を行い、20mトラスの標準図面を作成する。
 試作したトラスで載荷試験を行ったところ、スパン21m、2m間隔で配置、金属板葺き同等の軽い屋根での施工の場合、垂直積雪量90cm程度の地域の中短期積雪荷重相当において、破壊しなかった。しかし、想定外の破壊性状が生じたことから、仕口形状を改良し、性能向上を図る必要があった。また、長期荷重時のスパン中央のたわみは、制限値以下となった。  
CLTの特性を活かした汎用性の高い折板工法による建築物の実用化 R4 B  これまで木造では表現できなかった、折板工法等による魅力ある空間の確保とともに屋根の軽量化を実現するため、CLTを使用した折板工法の汎用性の高いモデルプランを提案するとともに、実大模型を製作し、生産コスト及び建築物に要求される品質性能を確保する手法を開発する。  折板工法での屋根アーチ部分の施行実証を行い、薄い断面、小さい重量、少ない材積で長スパン構造が構築できるなど通常工法に対する優位性が確認できたが、施工時における施工方法や防水処理などに改善の余地が見られ、実用化にはまだまだ課題が残る結果となった。  
科研費
基盤C
人工知能を用いた樹木内部欠陥の非破壊診断装置の製作 R2~R4 B  緑化樹や木製構造物の腐朽等による内部欠陥の状態を、共振周波数のバラつきから判定する装置が開発されているが、簡易な3段階の判定(健全、要経過観察、要精密検査)しかできない。そこで、AIを用いた振動特性(スペクトログラム)の画像解析により、腐朽の程度、空洞の有無、大きさ、位置までも判定できるよう改良する。  本技術を応用しスギ製材の内部割れの検知について検討したところ、内部割れが有る場合、振動特性に特徴があり検知できる可能性があることがわかったことから、多くの学習データを蓄積した。その結果、内部割れの程度を大、中、小の3区分に分類し検証したところ、大については、100%の正答率で検知可能との結果が得られた。  

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