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令和5年度の成果
【令和5年度成果】 研究分野 A:森林管理・経営、B:木質資源加工利用 | ||||||
予算事項名/試験研究課題名 | 実施年度 | 研究分野 | 目 的・概 要 | 主 な 成 果 | 資 料 | |
林業試験研究費 | 種子の検定と発芽試験 | S35~ | A | 優良な種苗の供給を確保するため、スギ、ヒノキ、アカマツの発芽試験等を行う。 | 発芽率はそれぞれ次のとおりであった。 ○少花粉ミニチュア採種園 御 槇 R05ス ギ 26% ○特定母樹ミニチュア採種園 東 温 R04ス ギ 8% 川 内 R04ス ギ 5% ○エリートツリーミニチュア採種園 内 子 R04ヒノキ 67% (サンサンネットあり) 川 内 R05ヒノキ 62% (サンサンネットあり) ○普通採種園 新居浜 R04ヒノキ 1% |
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スギ大径材利用技術研究 | R3~R5 | B | 大径原木の価格が適正に評価されるべく新たな利用法を普及させるため、原木の効率的な調達方法を実証し、強度性能を活かした断面積の大きい構造用部材へ利用する方法を開発するとともに、内装材の新たな付加価値として、大気浄化機能を持つ心材部の機能性を明らかにする。 | 木材市場において、簡易強度測定器を用いて原木の強度測定を行った結果、原木全体の約9割がEf70以上の強度を有していることが判明した。また、原木と製材品における強度の相関を調査したところ、その83%が原木と同等もしくは原木より強度が高いという結果が得られ、効率的な製材品の強度選別に原木段階での測定は有効であるとの結果が得られた。 また、内装材の大気浄化機能について、一昨年に得られた成果をまとめた指針を作成した。来年度以降、製材業者等に配布する予定としている。 |
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スギエリートツリー特性調査試験 | R4~R6 | A | スギエリートツリー種苗の普及を推進するため、材質強度の優位性について、幹の応力波伝播速度により検討する。加えて、DNA分析による材質強度の優れた母樹の特定を行い、既存精英樹やエリートツリー系統間の差を明らかにする。 | スギ大苗を植栽後9年経過した久谷試験地において、従来種苗区75個体、エリートツリー種苗区84個体の計159個体の応力波伝播速度を計測した。その結果、エリートツリー種苗区での応力波伝播速度の方が有意に高くなり、材質強度の優位性を確認できた。 また、DNA分析により、強度の優れた母樹を特定していくため、全個体の葉サンプルからDNA抽出を行った。 |
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林業普及指導事業費(林業躍進プロジェクト推進事業費) | ドローンを使用した森林施業地の写真測量手法の調査 | R3〜R7 | A | 森林施業地の現地測量に係る労務負担を軽減するため、写真測量に関する情報を収集し、現地実証、精度検証を行ったうえで、県内林業関係者(森林組合、林業事業体等)に技術の普及を行う。 | ドローンを使用した写真測量の精度を確認するため、林業研究センターの裏山に調査区を設置し、ドローンを自律飛行させて写真を撮影した。解析に使用する写真は3通りの飛行方向(長辺方向、短辺方向、長辺+短辺方向)から撮影されたものとし、2通りの方法(ソフトウェア、クラウドサービス)により解析した。これらの作業を各5回繰り返して計30枚のオルソ画像を作成し、調査区の面積及び重心位置を算出した。Clas方式のGnss受信機を使用した測量と比較したところ、面積は97.8%から103.7%の範囲内にあり、重心位置の二乗平均平方根誤差(Rmse)は4.0m以内であった。飛行方向や解析方法による精度の違いは確認できなかった。 | |
森林計画樹立費 | 森林資源モニタリング調査 | R2~R5 | A | スギ・ヒノキ現実林分収穫表の調整のためスギ・ヒノキ人工林において現地調査を実施する。 | スギ・ヒノキ現実林分収穫表の調整及び平成30年に測定された航空レーザ計測成果の精度確認のため、松山市、今治市、西条市、四国中央市、久万高原町の25林分において現地調査を実施した。今後、調査結果を解析し、県内のスギ・ヒノキ人工林の森林資源量を推定する予定である。 | |
新たな森林管理システム推進事業費 | 携帯型森林GISの構築及び活用に関する調査 | R2~R6 | A | 近年、航空レーザ計測データの解析により、精密な森林情報の整備が進められている。これらの情報を携帯機器と組み合わせて携帯型森林GISを構築し、森林・林業関係者による活用を図ることにより、新たな森林管理システムの推進に資する。 | 昨年度に「Qgis」を使用して試作した久万高原町全域の森林GISの利便性を向上させるため、法務省から公開された登記所備付地図データを追加した。また、県が作成した携帯型森林GIS「森林現地調査支援システム」の地番が古くなった場合を想定して同データを追加してみたところ、携帯機器の動作が不安定な状態になった。そこで、範囲を町内全域から一部区域に縮小したところ、安定して動作することを確認した。ただし、データの属性は表示されないことから、現地で使用する際は属性の表示された画像データ等と併用するのが適当であると考えられた。 | |
エリートツリー活用省力化モデル事業費 | 県オリジナルスギエリートツリー新品種開発研究 | R5~R7 | A | エリートツリーの効率的な種子生産や種苗の安定供給・苗木価格の低減を進めるため、従来種苗の実生から成長や木材強度などが、エリートツリーと同等以上の性能を有する個体を選抜し新たな県オリジナルの「スギ」エリートツリー新品種の開発を行う。 | 愛媛県育種混合種苗の中からエリートツリー並みの優良個体を選抜するため、植栽後9年を経過した林分にて、形質として樹高、胸高直径、雄花の着生量を、木材強度試験として応力波伝播速度の測定を行った。エリートツリーの樹高や強度に並ぶ個体が確認できた。また、それらのうち、雄花着花が少ない個体について、穂木を採取し、挿し木を行った。 | |
県産大径材利用拡大事業費 | 県産材によるツーバイフォー(2×4)工法部材開発研究 | R3~R8 | B | 大径化が進む県内森林資源を活用して、2×8や2×10等の大断面ツーバイフォー部材の製造技術を開発し、外材が占めている同部材での県産材によるシェアの獲得を目指す。 また、県内JAS認証工場と連携した商品化を目指し、新たな需要を開拓する。 |
ヒノキの210材の経年による変形を調査したところ、反りが大きい材は反りが改善し、ねじれは減少、曲がりはほぼ変化が無かった。幅ぞりは2月製造後から7月に向けて増加傾向であったが、等級が下がるほどの変化ではなく、その後止まった。これらの結果から、製造後の経年変化は問題ないことが確認できた。さらに、縦枠スギ×横枠SPFの壁パネルの性能を試験したところ、全てSPFの物と同等の性能があった。 | |
Clt建築物建設促進事業費 | Clt普及促進情報整備事業(Clt建築物環境評価検証事業) | R3~R6 | B | 県内のClt建築物における室内環境の情報を収集し、Clt利用の優位性を実証することに加え、Clt使用空間における人の生理・心理評価を行い、この結果を販売促進活動に活用することで、Clt建築物の建設促進を図る。 | 今年度Clt建築物に建替えた県内の事務所において、滞在する職員の気分状態の評価、脈波・唾液アミラーゼによる緊張・リラックス状態の評価及び室内の空気質・温湿度測定を行った。今年度は旧事務所における測定と新事務所における空気質測定のみ行ったが、建設直後の事務所では揮発性有機化合物が2,150μg/m3確認され、&alpヘクタール;-ピネンやD-リモネンなど木材由来の成分が大半を占める結果となった。 | |
造林費 | スギエリートツリーによる低コスト造林モデル林実証試験 | H26~R5 | A | 県有林において、エリートツリー大苗を用いて実用林分を造成し、初期成長を調査、下刈省力化に対する効果を検証する。 | 県下4箇所の試験地のうち、2箇所がエリートツリーの植栽地である。植栽後8~11成長期を経過しているが、各試験地とも第1成長期の樹高および樹高成長量については、エリートツリーと愛媛育種混合苗の間に差は出なかった。第1成長期以降の樹高はエリートツリーが有意に高くなり、久谷試験地では、エリートツリーと愛媛育種混合苗の第9成長期末の材積で約1.4倍の差がつき、初期成長だけでなく、幹材積においても有利性が確認できた。 | |
広域連携型農林水産研究開発事業費 | 無花粉スギの開発・生産・増殖効率改善試験 | R3 | A | 無花粉スギ品種からの種子生産量の増大・安定供給をはかるため、種子親となる無花粉スギや花粉親となる無花粉遺伝子を有するスギ精英樹等の着花・開花特性、種子生産性に関する特性を把握し、種子形成時期の気象との関係を明らかにする。また、無花粉遺伝子を有するスギ精英樹と特定母樹等を用いた人工交配を行う。 | 令和5年7月に無花粉遺伝子を持つ愛媛県精英樹及び通常の精英樹5系統、無花粉スギ2系統にジベレリン散布・浸漬処理を行った。 着花・開花特性:10月下旬及び11月中旬に雄花の着花指数を調査した。着花指数は、上浮穴16号が他の系統と比べて非常に高い指数を示し、花粉親として非常に有用であった。令和6年2~3月にかけて、雌花・雄花の開花フェノロジーの調査を行った。昨年度に引き続き、系統によって開花時期がずれ、雄花よりも雌花のほうが早く開花する系統があることが確認された。 種子生産に関する特性:令和5年10月に球果から種子を採取し、充実率、100粒重、発芽率の調査を行った。結果は育種センターに送付し、他のデータとともに解析される予定である。 人工交配:令和6年3月に無花粉遺伝子を有するスギ精英樹2系統から花粉を採取し、人工交配を行った。人工交配は、無花粉スギ1系統、無花粉遺伝子を有するスギ県精英樹1系統に対して行った。また、環境データを測定した。 |
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スギ雄花着花特性検査技術高度化試験 | H29~R6 | A | 幼木へのジベレリン処理による雄花着花量から、成木の自然状態での雄花着花量を推定できる手法を確立し、これにより現在20年以上を要している少花粉スギの育種期間を大幅に短縮する技術を開発する。 また、既存のヒノキミニチュア採種園の環境と種子生産量の関係を調査し、管理マニュアルを作成する。 |
ヒノキミニチュア採種園の母樹にジベレリンペーストを枝の基部に埋設した。ジベレリンに対する薬害及び雄花の着生傾向には系統により強弱があったが、薬害の程度は非常に低く、無視できるものと考えられた。また、球果をつけた枝にサンサンネット(赤)、(透明)、(黒)、寒冷紗の4種類のネットを設置し、サンサンネット(赤)、(透明)では複数年使用したものも用いたが、すべてのネットでカメムシの侵入を概ね防ぐことができた。令和5年度はカメムシが少なく、種類や使用年数で種子の発芽率(60~70%)に有意な差は見られなかった。また、ネット不使用でも高い発芽率(58.6%)を示した。 | ||
構造用製材の含水率の変化が強度に及ぼす影響の検証 | R5 | B | 構造用製材は含水率15%以下が要求されるが、生産性の向上や乾燥時のエネルギーコスト低減の観点から含水率20%以下の製材が求められている。このため含水率が20%から15%まで乾燥する際の割れ、寸法及び強度の変化について明らかにすることで、調達及び設計が容易な建築部材の普及の促進に寄与する。 | 月に1度、重量、寸法、われ、凹み量について測定を行った。重量測定による推定含水率はわずかに減少しているがほぼ横ばいであり、平衡含水率に達したものと考えられる。しかし推定含水率は15.8±3.0%であり、当センター内の温湿度から算出される平衡含水率は10月6日~12月6日%であったことから推定含水率が高めに出ている可能性がある。寸法は中央部の変化が最も大きい結果となった。凹みは0.1~0.3mm程度増加がみられ、寸法と同様に中央部の変化量が大きい。割れは個体差が大きいが、測定開始時から大きな変化は見られなかった。 | ||
20m超スパン対応JIS仕様トラスの継手仕口の開発 | R5 | B | 非住宅建築物の木造化を促進し、一般住宅以外での木材利用を拡大するためには、より大きな空間を構成できるトラスが必要になり、それに適合したトラスの仕様が必要である。このため、国産スギ等を用いた20mを超えるスパンのトラス開発が進められているところであり、今回、トラスの低コスト化を図るため、陸梁継手に新しい接合仕様を使用したトラスを開発する。 | 陸梁継ぎ手に新しい接合仕様を使用したトラスについて、集成材を使用したタイプと製材を使用したタイプの2種を試作し、強度試験を行った。試験の結果、いずれもスパン21m、2m間隔で配置、金属板葺き同等の軽い屋根での施工の場合、垂直積雪量90cm程度の地域の荷重条件に対して、十分な強度性能があった。 |