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センター研究報告1号要約
ペレットに加工したモウソウチクの泌乳牛用飼料としての利用性に関する研究
家木一
本論文は、モウソウチクの乳牛飼料化を目的として実施した一連の研究成果を取りまとめたものである。モウソウチクは飼料としての栄養価に乏しいが、モウソウチクにトウフ粕と醤油粕をそれぞれ乾物比40%と10%で混合したペレット飼料(BSSP)はアルファルファヘイキューブ(AC)と同等の栄養価であり、泌乳牛において飼料乾物中10%のACをBSSPに代替できることが示された。酪農現場における6ヶ月間のBSSP給与実証では、泌乳成績はBSSP利用前と比較して低下しなかった。タケの飼料利用による牛乳の高付加価値化に関してアンケート調査を実施した結果、食料自給や環境保全に配慮した取り組みとして消費者の理解を得られる可能性が示唆された。ペレット製造の汎用性拡大を目的として行なった飼料作物のペレット利用の検討では、青刈トウモロコシが有用なペレット材料になりうることを見出した。タケペレット生産の事業化に向けては、多様なバイオマス(有機資源)を飼料や燃料に変換できる汎用型ペレット生産システムの構築を提言した。
キ-ワ-ド:モウソウチク、ペレット、飼料、乳牛、バイオマス
黒毛和種去勢肥育牛における肥育前期のソルガムサイレージ給与が発育及び肉質に及ぼす影響
戸田広城、岡 幸宏、檜垣邦昭
黒毛和種去勢肥育牛において、第1胃の機能や容積が発達する時期とされている肥育前期(8ヶ月齢から12ヶ月齢)に粗飼料を多給することで、増体性及び飼料利用性に及ぼす影響を調査し効率的な肥育技術として活用できるか検証した。初年度には飼料中のTDNレベルを一定にした上で粗飼料(イタリアン乾草)多給を行った試験を行い、同様に次年度には粗飼料のうちイタリアン乾草及び自給飼料であるソルガムサイレージを多給した試験を行った。また、最終年度には2ヶ年実施した最適な肥育前期の粗飼料多給肥育に加え、モウソウチクに高栄養の食品製造副産物であるトウフ粕と醤油粕を混合してペレット化したタンパク質含量の高い飼料(以下BSSPと略記する。)を給与する試験を実施した。
- 肥育前期で粗飼料から得られるTDN量を50%に設定し、粗飼料源としてイタリアン乾草を給与した試験では顕著な効果が認められなかったが、粗飼料源としてイタリアン乾草に加えソルガムサイレージを給与した試験では増体性の向上、飼料摂取量の増加、飼料効率の向上が認められた。
- 肥育前期のタンパク質は胃の発育及び機能を高める上で重要な栄養分であることから、肥育前期のタンパク摂取量を落とさないためタンパク質補給としてBSSPを給与することは有効であると考えられた。
キ-ワ-ド:黒毛和種繁殖牛、粗飼料多給、イタリアン乾草、ソルガムサイレージ、モウソウチク
トウモロコシサイレージ主体ロール発酵TMRの調製・給与技術の開発
寺井智子、佐竹康明、家木一、岸本勇気
飼料自給率向上や高位乳生産を目指した自給飼料主体TMRの品質や貯蔵性を高めるため、細断型ロールベーラで成形梱包したロール発酵TMRを作成し、その発酵品質や乳用牛での利用性を調査した。その結果、ロール発酵TMRは長期間良好な発酵品質を保ち、好気的安定性に優れていた。乳用牛での利用性においては、発酵損失が少なく、フレッシュTMRと同等の飼料特性、生産性を有していた。また、原料中に飼料米やケールジュース粕を混合したロール発酵TMRは、発酵品質も良好で、泌乳牛用飼料として遜色のない飼料であり、また飼料自給率の向上に寄与した。以上の結果より、自給飼料主体ロール発酵TMRは泌乳牛用飼料として利用可能であることが示された。
キ-ワ-ド:ロール発酵TMR、食品製造副産物、飼料米、泌乳牛用飼料
多孔性資材を用いた畜産環境の臭気低減技術
寺井智子
近年畜産生産基盤と住宅地との混住化により問題となっている畜産臭気を低減するため、多孔質資材である炭資材を用いて畜舎からの臭気低減技術を検討した。その結果、バーク炭が臭気低減に有効であり、敷料に排泄ふん量比3%以上のバーク炭を混合し、敷料として利用することで、簡易かつ安全に畜舎臭気の低減に有効であった。また使用後は、家畜ふんとともに堆肥化処理することで簡易に処理が可能であった。
キ-ワ-ド:多孔性資材、バーク炭、畜舎散布、堆肥化
県内和子牛臨時市場における市場傾向と和子牛の市場評価
岡 幸宏、戸田広城、稲谷憲一
平成15年4月~平成22年2月に開催された県内和子牛臨時市場(7年間×6回/年 計42回)の和子牛成績と市場動向について検討した。主な経年的変化としては、価格面では、セリ価格等が平成20年度以降大きく低迷しており、生産面では、平成19年度以降、標準体重比、日齢体重及び体重体高比が増加する傾向を示し、交配種雄牛については、気高系種雄牛が増加する一方、田尻系及び藤良系種雄牛は減少する傾向を示していた。調査期間中、供用の多かった交配種雄牛では、総体的に安茂勝、茂勝栄、福栄、美津照等において市場成績が優れる傾向にあった。体重・体高を中心とした調査では、以前よりも増体性が良くなる一方、過肥傾向であることも認められた。血統構成による市場動向では、総じて気高系種雄牛を父とする血統構成において市場成績は良く、ばらつきも小さい傾向が見られ、田尻系の2代連続交配の市場成績は劣る傾向が見られた。
また、市場価格の高い平成18・19年度を高価格期、低い平成20・21年度を低価格期として価格決定要因の変化を検討した。顕著な変化とは言えないものの、去勢子牛・雌子牛間で傾向に違いが見られた。全体的な傾向としては、過肥ではない骨格のある大きめの体型を現す子牛を望む傾向で、種雄牛から見た希少性の高い子牛、また、遺伝的能力が高い雌牛を所有し、飼養管理が適正な農家の子牛等が価格形成に影響しているものと考えられた。
キ-ワ-ド:黒毛和種子牛(育成牛)、和子牛臨時市場、市場動向