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紫電改クラウドファンディング開始と重要航空遺産認定に関する記者発表の要旨について
【記者発表】
日時:令和7年6月30日(月曜日)15時00分~15時22分
場所:知事会議室
(南海放送(幹事社))
それでは臨時記者会見を始めます。本日は、紫電改のクラウドファンディング開始と重要航空遺産認定について発表があります。それでは知事お願いします。
(知事)
急な会見お集まりいただきありがとうございます。
日本国内に現存する唯一の実機、紫電改。愛南町の紫電改展示室で公開しているこの実機に関しまして、本日2点を発表させていただきたいと思います。
1点目は、展示館、老朽化が進んでおります。その建替えに伴い、必要となる紫電改の移設に係る費用について、多くの皆さんのお力添えをいただきたく、明日7月1日から、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングを開始したいと思います。
2点目は、来たる7月25日。紫電改が一般財団法人日本航空協会から重要航空遺産として、認定されることが正式に決定したので、お知らせしたいと思います。
まず、1点目の紫電改クラウドファンディングでございますが、お手元の資料1をご覧いただきたいと思います。
紫電改は、太平洋戦争中の厳しい状況下で、日本の航空技術の粋を集めて開発された機体であり、当時の航空機開発の到達点の一つとされ、現存する実機は世界で4機ございます。そのうち国内では本県所有の1機のみでございますので、貴重な戦争遺産でございます。
現在の機体は、大戦末期の昭和20年7月24日、空中戦の末に愛南町久良湾に不時着したとされておりまして、長く月日が経つ中で、昭和53年地元ダイバーによって偶然発見されました。翌年の7月、これは貴重な戦争遺産として残すべしという判断のもと、愛媛県によって34年ぶりに海底から引き揚げられました。
以来、戦争の悲惨さを伝える遺産として原形のまま残したいという関係者の強い思いのもと、最低限の修復を施し、その後、恒久平和への願いを込めて一般公開されてまいりました。これまでに延べ約181万人の来館者を迎えまして、多くの命が失われた歴史の記憶とともに、平和の尊さを今に伝えてきたところでございます。
建設から45年の月日が流れます。その結果、展示館は、老朽化が進行しており、令和8年度中の新たな展示館の完成を目指して、整備を愛媛県の方で進めてきたところでございます。
しかしながら、新たな展示館への移設に向けた機体調査を行った結果、引き揚げ当時の原形を残したまま後世に伝えるためには、やはり海底に長く滞在していたこともありましたので、機体への影響を考えなければならないということであります。機体への影響を最小限に抑える慎重な移設作業が必要不可欠であるということが、専門家の分析によって明らかになりました。これ実は当初全く想定しておりませんでした。場所が隣でありますからクレーンで引き揚げて移設すればできるのかなというぐらいの判断だったんですが、元々その機体を製造した名前は変わっていますけれども、現存するメーカーの技術者がぜひ、貴重なものなので分析させてほしいと要請もありまして、行っていただいた結果、判明したことでございます。
この機体は大戦中に製造され、長い年月海中にあったもので、現状のまま、移設するという事例は、全国的にも極めて稀(まれ)なケースでございまして、技術的にも難しい面も多くありますが、専門的かつ慎重な準備と作業によって、ぜひとも成功させたいと考えています。
無事に機体を移設するためには、当初簡単にできると思っていたのですが、想定以上に費用が必要となりました。その結果、その費用の一部について、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングを行うこととした次第でございます。
寄付の募集期間は、明日7月1日から9月5日までの約2か月間を予定しておりまして、当面の目標を1000万円、そしてこの期間中に最低でも3800万円を達成したいと考えています。いただいたご寄付は機体の補強あるいは移設用の台座の制作、クレーンによる移設作業などに充てる予定でございます。
さらにそれ以上のご寄付を、もしいただけた場合は、金額に応じてデジタル技術を活用するなど、実機に刻まれた歴史や紫電改にまつわる人々の思いを後世に紹介していくための展示の充実を図っていく費用に充てさせていただきたいと考えております。
今回のクラウドファンディングは、単なる資金集めではなく、賛同したい、支援したいという思いに加えまして、平和を考えるきっかけにしていただきたいと考えております。
既に戦争を知る世代、本当にいなくなりつつあります。その悲惨な歴史を後世に伝えていくのは今を生きる我々の責務でもあると思いますので、戦後80年という節目を迎える中で、そういうきっかけが生まれればなあというふうに思っています。ましてや世界に目を向けると、ロシアによるウクライナ侵略や中東など各地で紛争が絶えません。平和の大切さが一層増している今だからこそ、紫電改を展示している本県において、クラウドファンディングを通じて、戦争の記憶や歴史の教訓を全国の皆さんと共有することで、恒久平和の大切さを全国に情報発信していきたいと考えております。
続いて、裏面をご覧いただきたいと思います。
ご寄付は、先ほど触れましたように県のふるさと納税を活用したクラウドファンディングで、コースは、金額によってAからNまで全14コースを設けております。5千円から最も高額な1000万円までとなっています。本当にやってみないとどの程度集まるか分かりませんけれども、できるだけ県職員もいろいろ知恵をだして、ここでしか得ることのできない返礼品等も用意しております。
寄付額に応じて、紫電改オリジナルの寄付者限定グッズ、また展示館での体験イベントなど、返礼品を準備しています。
返礼品の一部を紹介いたしますと、まず、左下の写真8、裏面分かりますかね。写真8は愛媛県産真珠をあしらった紫電改オリジナルピンズでございます。愛媛らしさと紫電改を融合させた逸品であります。写真9は漫画家の紫電改343を書かれている作者の須本壮一氏、先日もこちらに来ていただきましたが、須本壮一氏デザインのオリジナルスニーカーでございます。
ただこれ、気を付けていただきたいのですが、パンフレットにも書いておりますが、ふるさと納税は、制度上、愛媛県民、県内在住の皆さんにご寄付をいただいた場合、税控除の対象にはなります。ただ制度として返礼品をお届けすることができない仕組みになっています。ですから返礼品は、県外の寄付者に対して行われるというのが、ふるさと納税の制度でございますので、この点はお気を付けいただきたいと思います。ただし、県内の方が、その趣旨に賛同しご寄付をいただいた場合は、お名前の掲示、この記念館に掲示したり、展示館のイベントへの招待などを行って、多少ではございますが、その思いに応えていきたいというふうに思っております。
寄付の受け付けは、前の映像モニターに投影している紫電改クラウドファンディング特設ウェブサイトを通じて行うこととしており、同サイトは、明日7月1日の午前0時に公開されることになっています。右上の二次元バーコードなどを通じてアクセス可能でございます。
お支払い方法は、同サイトを通じて、クレジットカード、銀行振り込み、コンビニ払いのいずれかを選択し、ご寄付をしていただくこととなります。
戦争体験者が年々少なくなっており、紫電改がその姿を通して、戦争の記憶と恒久平和の大切さを後世へとつなぎ、語り継がれる存在であり続けられるよう、ご寄付は大切に扱わせていただくことをお約束させていただきます。
どうか、皆さまの温かいご支援を心からお願い申し上げます。
次に2点目でございます。資料2をご覧いただきたいと思います。
重要航空遺産は、日本の航空技術や歴史・文化の中で大きな意義を持つものを、次世代へ大切に伝え、未来へと継承していくことを目的に、日本航空協会が平成19年に創設した認定制度でございまして、このたび紫電改がその13例目となるそうです。また中四国では初めての認定となります。
来たる7月25日に、日本航空株式会社の元会長で、現在、日本航空協会会長を務める植木義晴氏が来県され、私も出席のうえ、紫電改展示館におきまして、重要航空遺産認定証授与式を開催する予定でございます。
認定理由として、まず第1に、紫電改が、独自の翼の形状や旋回性能を高める装置、高性能エンジン、これは日本の誉というエンジンでございます。当時としては極めて先進的な技術を備えた機体でございまして、日本の航空機開発の当時の到達点の一つとされていることが評価につながったということでございます。
そして、第2に、国内でただ一つの実機であり、引き揚げた後も可能な限り原形を保つよう、慎重に修復されていることであり、技術的・歴史的価値の両面から高い評価を受けたということでございます。
今後とも、貴重な航空遺産である紫電改の価値をしっかりと未来へ継承するとともに、今回の認定を機に、多くの方に展示館に足を運んでいただき、紫電改に刻まれた史実や、それにまつわる人々の思いに触れながら、平和の大切さを改めて考えていただく機会にしていただくほか、紫電改を地域資源として一層活用することで地域の活性化にも結びつけてまいりたいと思います。以上です。
(南海放送(幹事社))
ありがとうございます。それでは質問のある社はお願いします。
(南海放送)
すみません、南海放送です。あらためて知事は先ほども平和の大切さなどおっしゃっていましたけども、あらためて、その共感するストーリー性がおそらくクラウドファンディングには必要かと思います。知事が考えられている、その紫電改に対する価値であるとかどういったコンテンツであると改めて教えていただけますでしょうか。
(知事)
そうですね、本当に戦争という痛ましい歴史がその当時刻まれました。国と国の衝突というのは今の時代とはまた違った背景がありますので、そういう歴史が刻まれたということでございます。その中で、戦争になってしまったが故に国内でもいろいろな武器の開発も行われました。特に航空機主力の時代であったことが背景にあって、機体の開発というのは、各国が競い合っていた時代でございます。開戦当初、日本人なら誰しも聞いたことがある戦闘機の主力は零戦でございましたけれども、当時の航空技術というのは4年ぐらい前になりますから、最高時速が380キロメートルくらいであったやに記憶してるんですけれども、その後さまざまな開発がなされて、先ほど日本国内における技術の到達点という話をさせていただきましたが、紫電改は時速640、650キロメートルの最高速度であったそうであります。先ほど触れた誉というエンジンが搭載されています。紫電改というのは、名前のとおり、紫電改の改は改良の改でありまして、当初の紫電というのは翼が操縦席の上にあった形体だったそうなんですね。ということは、上にあるということは車輪が長かった。それを格納するスペースが翼の中に多く必要だったので、改良し、その翼を下にしたことによって車輪の長さが小さくなって、翼をたたんだときに翼に収める容量も小さくなり、その分燃料が積めるということで、航続距離を伸ばすという改良を行ったので、紫電改という名前が付いているそうであります。
当時の日本の状況というのは、本当に戦争末期は物資が窮乏したそうであります。紫電改は、その性能を、良い悪いは別として、当時の戦争の記録によると発揮できないまま終戦を迎えました。というのは、本当に窮乏していた中で、本来であればオクタン価100の航空燃料で性能が発揮されるエンジンだったそうなんですが、当時の日本は窮乏してオクタン価60の航空燃料しか供給できないところまで、ある意味では窮乏していたという実態も、この歴史を語る中で見えてまいります。いわば戦争というのはそれだけ悲惨な状況をもたらすという一つのストーリーでもなかろうかというふうに思います。であるが故に、空中戦でも戦果をあげることができず、ただ米軍がこの機体を持ち帰ってオクタン価100の燃料を後に投入して実地訓練を行ったところ、当時のアメリカのP51戦闘機だったかな。そこに空中戦では負けなかったという、そういったテスト記録も残っているそうでございます。
そういうなかで、松山の基地から飛び立っていく、そういったところのパイロットの皆さんの人間ドラマもございます。こうしたことを通じて戦争がいかに悲惨なことか、平和が尊いかということも考える空間になっていけばいいのではないかなと思っていますので、それらを含めてクラウドファンディングのご参加をお願いしたいというふうに思っています。
(NHK)
NHKと申します。当初の想定以上に費用が必要になったという部分なんですけども、当初の想定がどれくらいで調査の結果、どれくらい必要になったのかというボリューム感をお伺いたいのと、移設に技術的に費用がかかるということで、可能であれば、特にどういった部分に、やはり費用がかるという、見込まれるのかお伺いできますでしょうか。
(知事)
ちょっとその件は現場の方から申し上げますけれど、費用が多く、当初よりかかったというのは、物価高騰の影響もあると思います。ただ、全く最初想定していなかったのが、本当にクレーンで横に移動すれば事足りると思っていたのは間違いありません。ただ、海中にも長く沈んでいた経緯もあります。それから最低限の手を入れて、展示が45年続いていたという期間の問題もあります。やっぱり、航空機を製造した、名前はもう変わっていますけれども、その系統を持つ会社が、ぜひ調査をさせてもらいたいと。自社の歴史でもあると思うんですね。本当に愛南町の現場まで来て、技術者が、入念にチェックをしていただいたところ、やっぱり、そのまま吊ったら、その時点で分解する恐れがあると。ということでありましたので、クレーンで吊るだけでも、やはりかなり手をいれなければいけないということは、全く想定していなかった部分なので、その点がメインということでございます。
※会見当日(30日)に以下のとおり記者クラブに回答
○調査の結果、移設費用はどれくらいになったか。また、どういう部分で費用がかかるのか。
・機体の移設費用は、既に実施した業務の費用を含めて総額4800万円の見込み。移設は、機体構造への負担を最小限に抑えるため、展示されている姿勢を保持したまま移設用台座へ乗せ、台座ごと機体を持ち上げる計画としている。
(NHK)
ありがとうございます。あと、すみません、もう1点だけお伺いしたいんですけど、今までのご発言の中と重複する部分があって恐縮なんですが、戦後80年というところで、当時を語れる方も少なくなっている中での、この実機を残すっていう大切さって本当に重要になっていると思うんですけど、その辺り、受け止めを伺ってもよろしいでしょうか。
(知事)
語り部の方が本当に、時代の変遷とともに、これは致し方ない、人には人生限りがありますから、致し方ないことなんですけれども、語り部までの実体験のメッセージにはなりませんけれども、戦争遺産という実物を通じて、そこに記録されている資料であるとか、文章を加えることによって、語り部に次ぐメッセージというものを伝える力にはなると思います。80年もの月日が経ったからこそ、本当に国内でたった1機しか現存していないこの紫電改を残すということを通じて、戦争、そして平和を考える機会を作っていくということは県としても大事な事業ではないかなと改めて思っています。
(NHK)
ありがとうございます。
(南海放送(幹事社))
よろしいでしょうか。それでは、以上で終わります。
(知事)
はい、どうもありがとうございました。
※議事録については、読みやすさや分かりやすさを考慮し、発言の趣旨等を損なわない程度に整理しております。
【記者発表資料】
【資料1】紫電改クラウドファンディングの開始について [PDFファイル/1.55MB]
【資料2】重要航空遺産の認定について [PDFファイル/271KB]