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更新日:2021年11月22日
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始まりは、平成23年9月、「時代に即した赤身志向の牛肉を、『黒毛和牛』で出来ないか!?」という中村知事のひと言であった。
この挑戦は、これまでの日本の和牛生産業界の常識を覆すものであり、「サシ重視でA5ランクの牛肉づくりを目指す」という我々研究者の意識との戦いの始まりでもあった。
そもそも、愛媛県には、「伊予牛『絹の味』」という和牛ブランドがあり、生産者は【黒ラベル】と呼ばれるA4~A5ランクの牛肉づくりに励んでいる。
「赤身志向」は「伊予牛『絹の味』」との大きな差別化に繋がるが、まずは愛媛のブランド牛にふさわしい素牛の選定がブランドを特徴づけると考え、
海の向こうの鹿児島県を訪ねて、ついに優良系統の『気高種』に出会った。
繁殖用のメス牛が研究センターにやってくる。まず驚かされたのは、その大きさ!
しかし、見た目のインパクトの割に性格は非常に温順であり、上品でブランド牛にふさわしい素牛だ。
我々の期待感が高まる中で、早速「赤身志向」への挑戦が始まる。
牛肉を赤身志向にするためのポイントは、ビタミンを多く含んだ飼料を与えることである。そこで、愛媛県らしく「ミカンジュースの搾り粕」を与えることにした。
子牛が生まれる。体重が大きく、元気の良い子牛だ!
素直でおとなしいので、肥育担当の女性研究員も「体重測定などの検査が楽だ。」と喜んでいる。ただ、人間と同じで牛たちにも好き嫌いがあり、「ミカンジュースの搾り粕」をあまり食べない牛がいる。そんな牛には、ゆっくり時間をかけて食べさせるのが日課となった。
ミカンジュース粕をどれくらい与えるのが最適か?少なければ効果はないし、多すぎれば脂肪の色や肉質に悪影響を及ぼしかねない。飼育期間の長い牛の場合は、結果が分かるのも遅いので、試行錯誤の中で不安はぬぐえない。
巷で「みかん牛」と呼ばれ始めた頃、大きな決断の時を迎える。
「アマニ油」との出会いである。牛肉での前例はないが、この健康油を摂取することで肉質が良くなるという研究成果もある。試してみる価値はあるが、
価格の高いアマニ油を使うことはコストアップに繋がるため、生産者の理解を得られるのか、価格に見合った効果が期待できるのかが心配された。
しかし、「美味しい牛肉を届けたい!」という基本理念に立ち返り、アマニ油を食べさせる試験研究を始めることにした。
平成26年9月、中村知事に初めて試験牛の牛肉を試食してもらった。
多くのマスコミの前での評価にドキドキしたが、ロースステーキを1口食べた知事から、「これだ!この肉」という言葉をもらい安心した。その後も試験肥育と食味検査を繰り返し、
平成27年8月に再度知事による試食会を開催。中村知事から「良くなったね~」と高評価をもらう。
ここに、4年の歳月を費やした「赤身と脂肪のバランスが良い黒毛和牛を作る。」という愛媛県の挑戦は1つの区切りを迎え、平成27年11月に一般販売を開始することが決定した。
現在、これまでの研究成果をまとめた生産マニュアルに従い、県内各地5戸の生産者が「愛媛あかね和牛」を育てている。
成長の早さと素直な性格は生産現場でも変わらず、2月下旬からは生産者の出荷が始まり、出荷頭数の増加により本格的な販売開始となる。ただ、研究はこれで終わりではなく、まだまだ続いていく。研究者としては、「愛媛あかね和牛なら幾らでも食べられる。」と多くの声を聞き、愛される牛肉になったと確信した時に、初めて完成したと満足できるのかもしれない。
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