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「郷土種による樹林化工法」技術指針

ページID:0008427 更新日:2023年9月6日 印刷ページ表示

「郷土種による樹林化工法(植生基材吹付)技術指針(案)

第1章 総則

1目的

本指針は、道路工事等に伴い発生する切土法面について、自然環境を保全するとともに、景観面、防災面に配慮した施工を行うことを目的とし、植生基材吹付により「出来る限り中低木の郷土種の木本植物による早期樹林化」という緑化目標を達成するために行う樹林化工法(以下「郷土種による樹林化工法」という。)の設計から施工・検収までの留意事項等に関する技術上の指針を示したものである。

2適用範囲

本指針は、愛媛県土木部が発注する切土法面緑化工事について適用する。

第2章 設計

1緑化目標

自然界での自然回復の順序を尊重しながら、ある程度遷移進行を短縮・促進させる考え方を基本姿勢とし、県内の地質、地形上の制約から将来的な基盤の安定を考慮し、「出来る限り中低木の郷土種の木本植物による早期樹林化」を緑化目標とする。

2導入樹種の選定

緑化目標を達成するため導入する樹種の選定にあたっては

 (1)草本種は、在来種を使用すること
 (2)補全種は、主構成種を被圧しにくい低木とすること
 (3)主構成種は、県内の天然生林に生育しているものから選定し、植生遷移の考え方を重視すること

等を基本方針として、県内を植物群落の分布状況および気象条件から「6つの播種パターン」に区分し、深根性の防災機能の高い広葉樹から選定した。

設計にあたっては、それぞれの播種パターンのうち樹種の組み合わせを変えた「タイプ」の中から、原則として周辺に生育している樹種を含む「タイプ」を選定し、播種工法を基本として使用する。

3設計の考え方

法面工の検討に先立ち、道路等の工事による地形の改変を極力少なくすることが重要である。そのためには、保存、保全の必要な地域を避ける路線の選定や、トンネル化、橋梁化等、改変を回避、最小化できる道路構造を選択する等十分に配慮する必要がある。

(1)植生工の設計

植生工の目的は、植物が十分繁茂した場合に次の2つの効果が期待出来ることである。

 (1)植物体による法面の侵食を防止すること
 (2)周辺の環境や景観との調和を図ること

しかし、植物の根系の生育深さには限度があり、法面の深い崩壊を防止する効果を期待することはできない。従って、植生工を適用する法面は、地山(基盤)が安定していることが必要である。

(2)法面勾配

「郷土種による樹林化工法」を採用する場合の最急法面勾配は1:0.6以上とする。

(3)植生基材吹付厚の決定

植生基材の吹付厚については、種子の健全な発芽・生育を促す必要があることから、植生基材の吹付厚選定表(表-1)に基づき、年降水量、法面勾配、地山の状態の各条件から必要とする厚さの中で最大の厚さに決定する。

表-1植生基材の吹付厚選定表

年降水量

法面勾配

地山の状態

(mm)

厚さ

-

厚さ

土壌硬度指数

クラック間隔

厚さ

-

-

-

-

30mm以上

50cm以上

8cm

1,200mm未満

7cm

-

-

15cm以上50cm未満

7cm

1,200mm以上1,400mm未満

6cm

1:0.6

6cm

-

-

1,400mm以上1,600mm未満

5cm

1:0.7
1:0.8

5cm

5cm以上15cm未満

5cm

1,600mm以上2,000mm未満

4cm

1:0.9
1:1.0
1:1.1

4cm

5cm未満

4cm

25mm~30mm未満
重粘土

-

2,000mm以上

3cm

1:1.2

3cm

25mm未満

-

3cm

第3章 施工

1法面の湧水、表面水等の排水工

法面の崩壊の原因には、地表水あるいは浸透水等の作用が原因となっている事例が極めて多い。そこで、法面工の施工直前だけでなく出水期も含めた出来る限り長期間の調査を行い、有効な排水処理工法を検討し施工するものとする。

2切土工

(1)法肩のラウンディング処理

切土の法肩付近は植生も定着しにくく、また、一般にゆるい土砂、風化岩が分布しているため、侵食も受けやすく崩壊しやすい。そこで、法肩の崩壊を極力防止するとともに景観をよくする目的で図-1を参考にラウンディング(地山と法面の不連続線を目立たなくする手法で、法肩部分に丸み付けを行うもの。)を行うものとする。

法肩のラウンディング処理の画像

図-1法肩のラウンディング概念図(道路土工 のり面工・斜面安定工指針P140~141参照)

(2)切土法面整形工

「郷土種による樹林化工法」を採用する箇所は、植物の生育条件の良好な部分を造るため、原則として切土法面整形工を全面的に施工しないものとする。

3基面処理工

吹付けた植生基材と地山との密着を図るため、浮石、浮土砂、浮根などの除去、清掃を行うものとする。法面に残存する植物のうち、地山の安定や将来の緑化目標に支障を及ぼさないものは出来る限り残すように刈り払い程度にする。

4基面処理完了後の調査

基面処理工が完了した時点で、土壌硬度指数、岩の亀裂間隔・節理、凹凸の状況、土質区分、土壌酸度、植生基材吹付面積等の調査を実施し、各々必要な措置を行うものとする。

5金網(ラス網)設置工

(1)金網(ラス網)張り

植生工に金網を併用する目的には、播種した植物が定着するまで、植生基材を安定維持させるほか、植生基材のひび割れの分散、凍上・凍結による持ち上がり滑落の緩和等がある。従って、金網は、出来る限り地山に密着するよう張るものとする。また、法肩部は主アンカーピンを用いて十分な固定を行うものとする。

(2)金網(ラス網)の露出の許容

切土法面整形工を施工しない場合は、法面の凹凸度合に応じて、金網(ラス網)の露出度合の規格値(表-2)に基づき、植生基材吹付後の金網(ラス網)の露出を許容出来るものとする。

表-2金網(ラス張)の露出度合の規格値

法面の凹凸(cm)吹付厚さ(cm)

凹凸<5

5≦凹凸<15

15≦凹凸<30

30≦凹凸

3cm≦t<5cm

30%

50%

-

-

5cm≦t<8cm

0

20%

50%

-

8cm≦t

0

0

10%

20%

6植生基材吹付工

(1)施工時期

施工適期(表-3)とは、種子の品質と施工時期以降の気象条件からみて播種に最適な期間のことであり、施工可能時期(表-4)とは、多少のリスクはあるが補正率等により一応施工が出来る期間のことである。従って、「郷土種による樹林化工法」における植生基材吹付けは、可能な限り施工適期(表-3)に施工することが重要である。繰越工事等でやむを得ず施工適期に施工出来ない場合においても、施工可能時期以外に施工すると、冬期までに木本植物が十分生育することができず、越冬中に枯死する個体が多くなるので、必ず施工可能時期に吹付けを行うものとする。

表-3施工適期

  • 高地施工(標高約800mを越える地域)
    当年度の3月上旬~翌年度の5月末
  • 低地施工(標高約800m以下の地域)
    当年度の2月中旬~翌年度の5月末

表-4施工可能時期

  • 高地施工(標高約800mを越える地域)
    採取種子の出荷可能時期(発芽試験等終了時)~翌年度の6月下旬
    翌年度10月中旬~翌年度の3月末(ただし、冬期で凍上が発生する恐れのある時期は除く)
  • 低地施工(標高約800m以下の地域)
    採取種子の出荷可能時期(発芽試験等終了時)~翌年度の6月中旬
    翌年度10月下旬~翌年度の3月末

(2)樹木種子

 (a)配合計画書
種子の配合については、設計の「播種パターンおよびタイプ」に対応した配合計画書(別紙-1)を作成し、施工を行うものとする。
 (b)種子の確保
「郷土種による樹林化工法」に使用する主構成種等の広葉樹の種子はすべて予約注文によりその年の秋に採取されるものであり、計画的な購入予約を行うものとする。また、予定の種子が凶作等で入手困難な場合は代替えの種子を確保する。
 (c)種子の品質等の確保
種子は原則として発芽試験等により品質が保証されたものとし、種子の出荷元において精度の良い計量器で計量されたものを使用する。なお、木本類の種子は低温・保湿保存の必要なものが多く、その品質の低下を最大限防ぐため、種子の搬入計画を十分検討し、現地に搬入された種子は直ちに使用する。また、やむを得ず使用出来なかった種子については低温貯蔵等の適切な管理を行うものとする。

(3)使用材料(種子以外)

使用材料については、分析試験等で品質が証明されているものを使用する。

 (a)植生基盤材および接合剤
植生基盤材および接合剤は、その成分等が導入した木本植物の発芽、成長に効果があるものとし、且つ降雨等による流出によって植物の発芽・生育に支障が生じることのないものを使用する。
 (b)肥料
肥料は、緑化目標の中低木の植物群落を造るのに効果があるものを使用する。
 (c)搬入材料の管理
種子以外の材料については、現場搬入後雨にあたらないようシートをかける等品質が低下しないよう適正な管理を行うものとする。

(4)その他

 (a)気象情報の把握
気象情報の把握については、降雨により造成基盤が流亡したり、侵食防止剤の効果が予定通り進まなかったりすることがあるので、十分に留意し、降雨中や降雨の恐れのあるときで支障があると思われる場合は吹付を避けるものとする。
 (b)立入制限
植物は、発芽後ある程度生育するまでの期間に踏圧を受けたりすると生育に支障が生じたり、生育基盤が剥離したりする恐れがあるので、1年程度は立入を制限する。

第4章 検収

1出来形管理基準および規格値

出来形管理基準および規格値については、土木工事施工管理基準(平成11年4月)の厚層基材吹付工によるものとする。ただし、法枠がある場合については、個々の枠内での厚さの平均値は設計厚以上、最小吹付厚は20mm以上とする。なお、法枠の有無にかかわらず、オーバーハング部の逆勾配の部分については、厚さの規格値を適用しない。

2緑化目標に対する判定基準

植生基材吹付の工事完了時においては、その緑化目標に対する成果の確認は困難である。植生工は、施工後、徐々に期待する成果物(目的とする植物群落)に近づいていく必要があり、そのため、一定期間を経過した時点で植生が目標に向かって遷移しているか否かを確認することとし、その判定基準を別紙-2のとおりとする。

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