ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織でさがす > 農林水産部 地方機関 > 林業研究センター > 令和3年度研究成果一覧(林業研究センター)

本文

令和3年度研究成果一覧(林業研究センター)

ページID:0008474 更新日:2023年5月25日 印刷ページ表示

【令和3年度成果】

研究分野 A:森林管理・経営、B:木質資源加工利用

表1
予算事項名/試験研究課題名 実施年度 研究分野 目的・概要 主な成果 資料
林業試験研究費 種子の検定と発芽試験 S35~ A  優良な種苗の供給を確保するため、スギ、ヒノキ、アカマツの発芽試験等を行う。  発芽率はそれぞれ次のとおりであった。
○エリートツリーミニチュア採種園
 川内 スギエリートツリージベレリン処理区25%
 スギ特定母樹ジベレリン処理区28%
 ヒノキサンサンネット(カメムシ防除)区64%
 ヒノキもみネット区51%
 ヒノキ無処理区18%
 重信 スギ特定母樹無処理区28%
 
スギ大径材利用技術研究 R3~R5 B  大径原木の価格が適正に評価されるべく新たな利用法を普及させるため、原木の効率的な調達方法を実証し、強度性能を活かした断面積の大きい構造用部材へ利用する方法を開発するとともに、内装材の新たな付加価値として、大気浄化機能を持つ心材部の機能性を明らかにする。  スギ大径材の強度特性を把握するため、板材に製材し乾燥処理した試験材についてヤング率を測定するとともに反り曲がりの評価を行った。
 大気浄化機能については、異なる乾燥条件のスギ材について、その機能性を評価したところ、乾燥温度が低い程、浄化能力は高くなることが明らかとなった。
 
園外花粉率低減試験 H29~R3 A  人工林皆伐後の再造林を担う、初期生長に優れたスギやヒノキの苗木“エリートツリー”の普及を進めるため、生産された種子の園外花粉の混入率を調査し、簡易ビニールハウスや簡易防風垣等の低コストな資材や方法で園外花粉率の低減を図る方法を検討する。  川内ミニチュア採種園の平成25年度造成箇所において、令和2年度の夏にジベレリン処理を、冬~春にビニールハウス及び簡易ビニールハウス設置を行い、交配・結実した球果から3年秋に採種した。
 令和2年度に採種した川内採種園(27年度造成箇所)の種子の親子鑑定を行った結果、園外花粉率は施設なし20.8%、簡易ビニールハウス12.8%、簡易防風垣20.0%、発芽率はそれぞれ11.8%、1.3%、11.1%であった。また、種子を5g以上生産した母樹1本あたりの種子生産量は、70~90gであることが判明した。
 
林業普及指導事業費(林業躍進プロジェクト推進事業費) ドローンを使用した森林施業地の写真測量手法の調査 R3〜R7 A  森林施業地の現地測量係る労務負担を軽減するため、写真測量に関する情報を収集し、現地実証、精度検証を行ったうえで、県内林業関係者(森林組合、林業事業体等)に技術の普及を行う。  林業研究センター内の採穂園(9箇所)をドローンで写真撮影し、写真計測ソフトウェアを使用してオルソ画像を作成した。GISを使用してオルソ画像から採穂園の面積及び周囲長を計測したところ、GNSS測量やコンパス測量と概ね一致した。ただし、上空を樹木で覆われた箇所は区域の確認が困難であった。写真測量に要した時間をGNSS測量やコンパス測量と比較したところ、外業時間は大幅に短縮された。  
森林計画樹立費 森林資源モニタリング調査 R2~R5 A  スギ・ヒノキ現実林分収穫表の調整、天然更新完了基準の見直しのためスギ・ヒノキ人工林及び皆伐地において現地調査を実施する。  スギ・ヒノキ林分収穫表の修正調査については、宇和島市の10林分において成長量調査を実施した。天然更新完了基準の現地適合性調査については、宇和島市、愛南町の15箇所に調査地を設けて調査した。  
新たな森林管理システム推進事業費 携帯型森林GISの構築及び活用に関する調査 R2~R6 A  近年、航空レーザ計測データの解析により、精密な森林情報の整備が進められている。これらの情報を携帯機器と組み合わせて携帯型森林GISを構築し、森林・林業関係者による活用を図ることにより、新たな森林管理システムの推進に資する。  南予森林計画区の区域を対象に、スマートフォンとフリーソフトを組み合わせた携帯型森林GISを試作した。試作機を森林資源モニタリング調査等で使用したところ、携帯性・操作性・視認性等は概ね良好であり、目的地への移動や位置座標の確認等が容易に行えることを確認した。  
未来型農林水産研究プロジェクト推進事業費 花粉を出さないスギ新品種高速開発研究 R2~R4 A  スギ花粉症対策のため、無花粉遺伝子を持つ県産精英樹「上浮穴16号」を育種素材として使用し、さらにDNA分析による無花粉個体識別を取り入れ、従来の半分以下の期間で可能な高速育種を実現し、優良無花粉スギ品種を開発する。  令和3年春に無花粉遺伝子をヘテロで持つ県精英樹「上浮穴16号」と無花粉スギに対し人工交配をおこなった結果、球果の肥大が確認され、種子7.4gを採取、令和4年春に播種した。
 また、無花粉遺伝子(ms-1)を有する個体を簡便かつ迅速に判別できるDNAマーカー支援選抜法を開発し、学会誌に論文発表し、掲載された。
 
県産材によるツーバイフォー(2×4)工法部材開発研究 R3~R5 B  大径化が進む県内森林資源を活用して、2×8や2×10等の大断面ツーバイフォー部材の製造技術を開発し、外材が占めている同部材での県産材によるシェアの獲得を目指す。
 また、県内JAS認証工場と連携した商品化を目指し、新たな需要を開拓する。
 ヒノキの204、206、208材を試作し、目視等級による出現割合を確認したところ、大半が特級の格付けを有し、さらに2級以下の格付け要因は節や反りによるものが多いことがわかった。
 また、部材開発検討委員会を開催し、製材・加工業界と意見交換を行った。
 
CLT建築物建設促進事業費(森林環境税) CLT普及促進情報整備事業(CLT建築物環境評価検証事業) R3~R4 B  県内のCLT建築物における室内環境の情報を収集し、CLT利用の優位性を実証することに加え、CLT使用空間における人の生理・心理評価を行い、この結果を販売促進活動に活用することで、CLT建築物の建設促進を図る。  非木質空間の事務所とCLT空間の事務所にて、印象評価、気分に関するアンケート調査、脈波・唾液アミラーゼの測定による緊張・リラックス状態の評価、空気質及び温湿度変化の測定を実施した。
 結果、CLT空間において、印象評価では概ね好意的な印象を与えていること、気分に関するアンケート調査では、緊張や不安を和らげる効果を示すこと、生理面の評価(唾液アミラーゼ)では、ストレスが低下している可能性を示唆する結果を得た。
 
造林費 スギエリートツリーによる低コスト造林モデル林実証試験 H26~R5 A  県有林において、エリートツリー大苗を用いて実用林分を造成し、初期成長を調査、下刈省力化に対する効果を検証する。  県下4箇所の試験地のうち、2箇所がエリートツリーの植栽地である。植栽後6~8成長期を経過しているが、各試験地とも第1成長期の樹高および樹高成長量については、エリートツリーと愛媛育種混合苗の間に差は出なかった。第1成長期以降の樹高はエリートツリーが有意に高くなり、初期成長おける有利性が確認できた。  
鳥獣害防止対策事業費 ニホンジカ被害の防除に関する改良型ツリーシェルターの実証(鳥獣害対策研究開発実証事業) H30~R2 A  ニホンジカの食害防止のために使用される造林用苗木の保護資材の通気性を改良し、食害防止効果、苗木の生育状況を調査する。  試験地は今治市鈍川地区と西予市城川地区の若齢林に設け、苗木をそれぞれ20本植栽後、保護資材を設置した。保護資材は市販品、通気孔を増加した改良型を10本ずつ交互に設置し、温湿度ロガーを用いて資材内外の温湿度を測定した。ロガーは試験地中央部に設置し、市販品および改良型の内部を2本ずつ、外気1カ所を測定した。今回は3つ通気口を増やしたが、温湿度の大きな変化は見られなかった。  
広域連携型農林水産研究開発事業費 無花粉スギの開発・生産・増殖効率改善試験 R3 A  無花粉スギ品種からの種子生産量の増大・安定供給をはかるため、種子親となる無花粉スギや花粉親となる無花粉遺伝子を有するスギ精英樹等の着花・開花特性、種子生産性に関する特性を把握し、種子形成時期の気象との関係を明らかにする。また、無花粉遺伝子を有するスギ精英樹と特定母樹等を用いた人工交配を行う。  令和3年7月に無花粉遺伝子を持つ愛媛県精英樹及び通常の精英樹6系統、無花粉スギ2系統、エリートツリー1系統にジベレリン散布・浸漬処理を行った。
 着花・開花特性:11月に雄花の着花指数を調査した。着花指数は、上浮穴16号が他の系統と比べて非常に高い指数を示し、花粉親として非常に有用であることが判明した。令和4年2~3月にかけて、雌花の開花フェノロジーの調査を行った。加温した温室で育成している個体では、2月初旬に開花が確認された。系統によって開花時期がずれることが確認された。
 種子生産に関する特性:令和3年10月に球果から種子を採取し、充実率、100粒重、発芽率の調査を行った。結果は育種センターに送付し、他のデータとともに解析される予定である。
 人工交配:令和4年2~3月にかけて、無花粉遺伝子を有するスギ精英樹から花粉を採取し、人工交配を行った。人工交配は、無花粉スギ1系統、スギ県精英樹1系統、エリートツリー1系統に対して行った。また、ガラス温室内に環境データロガーを設置した。
 
スギ雄花着花特性検査技術高度化試験 H29~R6 A  幼木へのジベレリン処理による雄花着花量から、成木の自然状態での雄花着花量を推定できる手法を確立し、これにより現在20年以上を要している少花粉スギの育種期間を大幅に短縮する技術を開発する。
 また、既存のヒノキミニチュア採種園の環境と種子生産量の関係を調査し、管理マニュアルを作成する。
 17年生のスギ県精英樹6系統に対してジベレリン処理を3段階の濃度で行った。20ppmでは100ppmと異なる着花指数を示す系統があり、20ppmでは安定した結果は得られないと考えられた。5、6年生と31年生のスギさし木7系統に対してジベレリン処理を行ったところ、着花指数に5年生、6年生では差が見られなかった。
 ヒノキミニチュア採種園の母樹にジベレリンペーストを枝の基部に埋設した。ジベレリンに対する薬害及び雄花の着生傾向には系統により強弱があった。また、球果をつけた枝に防虫ネットを設置し、カメムシの被害防除を行ったところ、目合い0.8mmのネットではカメムシの侵入を概ね防ぐことができたが、1.0mmのネットでは防ぐことができなかった。
 
CLTの特性を活かす平版構成の普及に向けての開発研究 R3 B  CLTを床又は屋根に使用するにあたり、幅方向の接合技術は未開発な状況にある。汎用性が高く、現場で施工可能な接手接合方法を検討、実大載荷試験により性能を検証し、実用化を図る。  鋼板を添えて木ビスで接合する鋼板接合と、CLTに鋼製ロッドを挿入し接着接合するGIR接合について、施工性の確認と載荷実験を行った。試験の結果、いずれの接合方法も載荷によるたわみ量がたわみ制限値をクリアした。また、鋼板接合は施工において下場作業が多いこと、木ビス本数が多いことが課題であった。一方、GIR接合は接着による養生期間が生じることがネックであるものの、施工がしやすいことが確認できた。  
人工乾燥材の安定供給に向けた適正乾燥条件研究 R3 B  スギ及びヒノキ、カラマツ製材について、主要な製材事業者等との人工乾燥工程の改善に関する意見交換を行う。その結果を踏まえ、乾燥材生産現場で採用可能な乾燥方式と許容される乾燥日数を考慮しながら、仕上がり含水率のばらつきが小さく、割れが少なく、かつ強度性能が確保された適正な乾燥条件を検討する。  スギ製材において、重量選別を用いた乾燥処理に加え、久万広域森林組合父野川事業所で実用されているラミナ用木口画像選別システムによって算出された心材率及び明度を用いた前選別の有効性について検討した。結果、仕上がり含水率と明度との相関関係は低いものの、今後、明度の閾値や心材率の計測技術を向上させることで、選別効果の向上が期待されることが示唆される結果を得た。  
木製パーティションを用いた空間木質化の効果実証事業 R3 B  木材がもたらす空間快適性のエビデンス収集を目的に、オフィス空間へ木製パーティションを設置して温湿度変化、空気質、滞在者の心理・生理指標及び生産性への効果等を検証し、民間建築物件の内装木質化の契機とする。  民間小規模オフィスに非木製パーティション及び木製パーティションをそれぞれ異なる期間に設置し、その空間で執務している職員を対象にアンケート調査を行うことにより、(1)空間の印象評価、(2)心理状態の把握、(3)仕事の作業性や行動の変化等の評価を、また心拍数や唾液コルチゾール等の測定により、(4)緊張・リラックス状態の評価を行った。結果、木製パーティションではその空間を利用する人のストレス緩和とその持続性が示唆される結果が得られた。また、木製パーティションの印象は樹種よりもデザインによる影響が大きく、デザイン毎の適した用途を提示するためのデータを得ることができた。  
科研費
基盤C
人工知能を用いた樹木内部欠陥の非破壊診断装置の製作 R2~R4 B  緑化樹や木製構造物の腐朽等による内部欠陥の状態を、共振周波数のバラつきから判定する装置が開発されているが、簡易な3段階の判定(健全、要経過観察、要精密検査)しかできない。そこで、AIを用いた振動特性(スペクトログラム)の画像解析により、腐朽の程度、空洞の有無、大きさ、位置までも判定できるよう改良する。  R2年度の研究により貫通空洞を有するスギ試験体において空洞の有無をAIで検知できたことから、R3年度は実物の樹木の学習データを収集するため、松山城公園等でサクラ等の振動測定を行った。また、スギ製材の内部割れの検知について検討したところ、内部割れが有る場合は振動特性に特徴があり、検知できる可能性があることがわかった。  

AIが質問にお答えします<外部リンク>