「間伐材を利用したナメコ栽培」


 面河村農林業後継者協議会では、プロジェクト活動として、村内で産出されるヒノキの間伐材を活用したナメコ栽培に取り組んだので、その概要を報告します。
 (農林業後継者協議会とは言いましても、メンバー全員サラリーマンで実家が山や田畑を所有している人たちの集まりです。ちなみに林業改良指導員は農業改良普及員とともに指導者という立場で会のメンバーになっています。)

 当後継者協議会がこの活動に取り組んだのは、愛媛県林業試験場が林内に放置され利用されにくい曲がり材や小径木等の活用法として、キノコ原木としての利用の可能性はないかと試験研究した成果「未利用間伐材の利用技術開発試験研究報告」を目にしたからです。その中には、ヒノキ間伐材において、ナメコとクリタケは比較的有望であるとありました。
 ここ何年かは、自主的に何かに取り組むといった活動が停滞していた後継者協議会は、「村に小さなものからの動きをつくりたい」との思いで、この活動に取り組むこととなりました。

 まず、後継者協議会長が面河村担当の林業改良指導員と愛媛県林業試験場へ出向き、ナメコの詳しい話や将来の展望などの話を聞きました。
 その時、協議会長が思ったことは、次のようなことでした。
 1発生が10月〜11月頃なら面河村は紅葉のシーズンで観光者への消費がねらえる。「ふるさと市場」で販売して後継者協議会の活動資金にできる。
 2広葉樹に比べ多くの収量は期待できないが、我が山の間伐材を有効に活用することができる。

 キノコ原木としての材質特性

スギ ヒノキ コナラ
生材含水率 % 61 60 40
絶乾比重 0.33 0.36 0.71

 ・スギ、ヒノキは水分が多い。
 ・スギ、ヒノキはキノコが養分として利用する木部の成分量が少ないというキノコ原木としてはマイナスの材質特性を持っている。(広葉樹原木に比べ収量的に多くは期待できない。)

 ホダ木作り
 ・原木の伐採は晩秋から早春の成長休止期がよい。
 ・植菌は原木が乾燥しないように行う。(生木植菌)
 ・伏せ込みは、ホダ木が乾燥しないようにする。(地伏せ)



1年目
 初年度は、2000個の種菌を60本のホダ木に植菌しました。ナメコは1年目から発生が望めるということで期待をしていましたが、発生までには至りませんでした。
 その原因として、植菌の時期が遅かったことと夏場に雨が少なかったためホダ木が乾燥したことなどが考えられました。
 菌は充分に蔓延していたので、初年度の発生が見られなかった最大の原因は乾燥にあったと推察しました。

  写真は、間伐木にナメコ種駒を植菌しているところ
植菌作業



2年目

 1年目の反省をふまえ、2年目はホダ場を湿度の高い所に移動することにしました。
 山の斜面から谷川の側のホダ場へ場所替えです。
 湿度を上げる方法として、散水してやればよいのですが、手間(生産コスト)をかけないで栽培するところにこの事業の意味がありますので、散水施設は設置しませんでした。
(ナメコは、その発生時期に多くの水分を必要とするので、本格的に栽培を始めるのなら、散水施設は不可欠である。)
 
 ナメコ発生適温湿条件

気温 5〜20℃ 昼夜の温度差が10℃程度あるのが最適
 早生 15〜20℃
 中生 10〜15℃
 晩生  5〜10℃
空中湿度 80〜90%(シイタケに比べ10%程度高い)


 その年の11月、ついにナメコの発生が確認されました。
 その11日後に初の収穫を行いました。この時の収穫はやや時期遅れで、傘が開いたものも多くありました。以降、8回の収穫で約6kg収穫することができました。

  ナメコの発生状況写真(右横のたばこと比較してもらえばそのサイズがわかります。)
ナメコ発生状況

 ナメコ収穫量

収穫日 収穫量(kg)
11月12日 2.00
11月13日 2.00
11月15日 0.60
11月16日 0.08
11月19日 0.44
11月23日 0.12
12月 2日 0.49
12月 6日 0.08
合計 5.81


 収穫したナメコは、後継者協議会のメンバーによって試食されました。ナメコ特有のトロ味が出て、とても美味とのことでした。
 ナメコの場合、小粒が上等品と考えられがちですが、本当のナメコの味は7〜8分開いたものでないと出ないそうです。

 ナメコ料理いろいろ    

料理名 料理法
つけ焼き 成熟して開いたナメコを水で洗い、コンロに炭火をおこして餅網を乗せ、ナメコをあぶり、醤油をつけて食べる。
天ぷら 成熟して開いたナメコを布巾で軽く水気を切り、小麦粉と天ぷら粉をまぶして揚げる。
から炒め ナメコを洗ってから水を入れず鍋で火にかけ、泡立ってきたら醤油と酒で味付けし、再び泡立ててから火を止め、冷ましてから食べる。
青菜入りみそ汁 みそ汁に入れる。
ナメコの場合、豆腐よりも季節の青菜の方が合います。


3年目
 とりあえず、ナメコを発生させることができたので、今年度はさらに植菌量を増やし、今度は収穫したナメコを販売したいと考えました。
 また、短木断面栽培を導入し、ナメコだけでなくホダ木も販売することを計画しました。
 短木断面栽培とは、原木を15cm程度に輪切りにして、種駒菌と練り菌を木口主体に植菌する方法で、ナメコの発生量も多く、ホダ場面積も少なくてすむ省力的な栽培方法といわれています。

 いざ植菌という段階で、問題が起きました。練り菌の入手ができなかったのです。
 短木断面栽培のメリットは、植菌した年に収穫が可能なことですが、これは種駒菌と練り菌を併用することによる相乗効果によるところが大きいとされており、種駒菌だけではこの栽培方法のメリットが期待できません。ものは試しで、その栽培方法だけでも体験しておけば経験になるだろうということでやってみることにしました。

 4ヶ月ほど仮伏せした7月下旬、林内に本伏せしました。
 土中に半埋め状態にし、上から落ち葉をかけ、乾燥を防ぐようにしました。
 その1ヶ月後に確認したところ、菌の蔓延状況はすこぶる良く、今にもナメコが生えてきそうな状態でした。
 

 10月下旬、短木ホダ木からナメコの発生がありました。1つのホダ木からのみではありましたが、後継者協議会にとっては大きな光明となりました。
 来年度は本格的に短木断面栽培に取り組むことを決意しました。

 この年のナメコの発生量ですが、1年目に植菌したホダ木から次のような発生が見られました。

収穫日 収穫量(kg)
10月14日 0.90
10月17日 0.70
10月19日 0.15
10月26日 1.06
10月28日 0.75
10月31日 0.48
11月 2日 0.13
11月 7日 1.90
11月 9日 0.13
11月12日 0.69
11月21日 2.23
11月28日 0.80
11月30日 0.16
12月 5日 0.15
12月12日 0.34
合計 10.57


 ある程度、栽培方法のノウハウも身に付いてきたので、このナメコ栽培を広くアピールし、村内に波及させようと考え、11月の「面河村ふるさとまつり」にホダ木展示とナメコの販売を行うことにしました。
 ナメコ販売については、ミニトマト用パックにナメコを150g入れ、それを30パック用意しました。珍しかったのか、わずか20分で完売し、予想外のことに驚きました。
 来年は面河村特産品開発センター(ふるさと市場)で商品化することを本気で考えはじめました。


4年目

 引き続きナメコを植菌するとともに、この年は「村内で本格的にナメコ栽培に取り組んでもらえる人を見つける」ということを目標としました。
 そのためにはどうすればよいか、協議会メンバーで話し合った結果、「マスコミに取り上げてもらえたらすごいPRになるのでは」という結論に達しました。

 10月、地元の愛媛新聞に取材をお願いし、後継者協議会の活動を掲載してもらいました。さらにこの記事をもとに日本農業新聞等にも記事が掲載されたため、予想外の宣伝効果を生み、村内住民の反響はもとより、県内外からナメコの注文、視察の依頼が殺到することとなりました。

 記事掲載一覧

愛媛新聞 ワイド欄 写真入り 記事スペース 25cm×17cm
日本農業新聞
山形新聞 ネットワーク欄 100文字程度
農林漁業現地情報 (農政局発行) 500文字程度


 この年から生産したナメコを商品化し、面河村特産品開発センターで販売をはじめました。
 商品化とは、1パックにナメコを100g入れ、それに桧の葉を彩りに添えて、1パック300円という値をつけてみました。
 センターでの売れ行きは良好で、数時間のうちに完売していました。
 遠方からの注文にはクール宅急便で送ったりしましたが、キロ単位の注文には生産が追いつかず、お断りしたこともありました。

 ナメコ収穫量 

収穫日 収穫量(kg)
10月16日 0.082
10月18日 0.057
10月20日 0.135
10月24日 1.374
10月25日 0.216
10月30日 1.500
10月31日 0.014
11月 2日 0.800
11月 6日 0.575
11月 7日 0.250
11月 8日 1.050
11月11日 0.325
11月14日 0.600
11月15日 0.420
11月20日 1.050
11月24日 1.170
11月27日 0.730
11月29日 0.292
12月 5日 0.580
12月20日 0.550
合計 12.178

 

 収益性についての試算(ホダ木10本当たり)

項目 ホダ木10本当たり 備考
ナメコ収量 7.2kg 2.4kg×3年
ナメコ販売額 21,600円 100g入り1パック 300円で販売
菌代 1,206円 10本当たり450個 1個2.68円
パック 代 311円 1パック4.32円  72×4.32
寒冷遮代 757円
販売経費 2,160円 販売手数料 販売額の10%
経費合計 4,434円
差し引き 17,166円


 栽培に係る作業時間(ホダ木10本当たり)

作業項目 所要時間 備考
ホダ木採取 0.5
植菌 0.5
収穫 15.0 0.25h×20回×3年
調整出荷 30.0 0.5h×20回×3年
その他 0.5
合計 46.5


 なお、上記の試算は、ナメコが開く前に収穫を行うことを前提として算出しました。
 ナメコの味はシイタケのように傘が開いた状態がもっとも美味しいと食通の間では言われています。よって、傘の開いた状態で出荷すれば、収穫量(重量)も増加するのではないかと考えております。
 しかし、現在、ナメコと言えば開く前の状態が世間一般に浸透していますので、傘の開いたナメコを見せると「何?これ。水でふやけたシイタケ?」みたいな反応が返ってきます。
 今後は、傘が開いて成熟した本当のナメコの味を一般消費者に浸透させるべく、アピールしていこうと考えております。

 また、11月の「面河村ふるさとまつり」で、農林業後継者コーナーを設け、「ナメコ栽培をやってみませんか」と題し、これまでの活動内容を公開してみました。
 この活動が功を奏し、村内の2名の方から「ナメコ栽培に取り組んでみたい。指導をお願いしたい。」という問い合わせがありました。

 さらに、新事実が発覚!後継者協議会のこの一連の活動を知っていた人たちによって、既にナメコ栽培は始められており、「松山市で契約販売を始める」という段階まで発展していました。

 これまで後継者協議会がプロジェクト活動として取り組んできた「間伐材を利用したナメコの栽培」ですが、一応の成果を得られたと思います。
 次はまた別の活動で地域の活性化に貢献していきたいと協議会メンバーは意気込んでおりました。



お問い合わせ先
愛媛県中予地方局産業経済部久万高原森林林業課
〒791−1201 愛媛県上浮穴郡久万高原町久万571−1
電話:(0892)21−1265(代) FAX(0892)21−1267
E−mail:chu−kma−ringyo@pref.ehime.jp



戻る   トップへ



愛媛県のホームページへ