| 喫煙とがん(国立がんセンター研究所ホームページ「一般向け情報」より) | |||
| 1.がんの原因としての喫煙の重要性 喫煙は、さまざまながんの原因の中でも、予防可能な単一の要因として最も重要と考えられています。欧米の研究では、がん全体の30%は喫煙が原因と考えられています。 2.喫煙と関連のあるがん 喫煙とがんの関連については、これまで動物実験や疫学研究など、さまざまな研究が行われてきました。これらは、1964年に発表された米国公衆衛生総監報告をはじめとして、世界各国で数多く報告されています。 これらの報告の中で、肺がん、食道がん、膵臓がん、口腔・中咽頭・下咽頭がん、喉頭がん、腎盂・尿管がん、膀胱がんについては、喫煙との間に因果関係があると解釈されています。これらの部位のがんでは、喫煙との関連の大きさが相対リスク(非喫煙者と比べた場合の喫煙者でのがんの危険性)として2倍以上の値を示しており、喫煙との因果関係があると判断する十分な根拠があります。また、子宮頸部がんは多くの疫学研究で喫煙との関連が示されていますが、最も重要な危険因子である、ある種のウイルス(パピローマウイルス)感染の影響を除いた場合の関連については専門家の間でも議論があります。 喫煙と弱い関連(おおむね相対リスクとして2倍以下)があるがんとしては、腎細胞がん、胃がん、肝がん、白血病(特に骨髄性)があります。また、関連があると考えられますが、まれながんのため結論を明確に出せない部位として、口唇がん、鼻腔副鼻腔がん、上咽頭がんがあります。また、大腸がん、女性の乳がんについては、これまでは関連がないと考えられてきましたが、最近関連があるのではないかと専門家の間でも議論が続いています。 3.喫煙とがんの関連の大きさ 喫煙と関連があるがんについては、喫煙年数が長いほど、1日の喫煙本数が多いほど、また、喫煙開始年齢が若いほど、がんの危険性が高くなります。 表1に、わが国における喫煙による相対リスクと人口寄与危険(がん患者の中で喫煙が原因と考えられる割合)を示しました。喉頭がんでは、相対リスクが男性が32.5倍、女性が3.29倍と高く、次いで肺がん、口腔・咽頭がん、食道がんなどで高くなっています。女性の相対リスクが男性に比べて低いのは、女性の喫煙者の喫煙本数や年数が少ないためと考えられます。人口寄与危険については、男性の喉頭がんで96%と、ほとんど喫煙が原因と考えられます。女性の人口寄与危険度が男性に比べて低いのは、相対リスクが低く、女性の喫煙率が低いことが関係しています。 表2には、米国における2つの時期の喫煙による相対リスクおよび寄与危険割合をがんの部位別に示しました。男性の喉頭がんを除き、わが国での喫煙による相対リスクおよび人口寄与危険割合は、米国に比べて低い傾向にあります。この理由として、わが国において喫煙習慣が普及した時期が米国に比べて約20年遅いこと、第二次世界大戦後にたばこ欠乏期があったこと、フィルターなし(両切り)たばこの普及期間が短かったこと、喫煙開始年齢が比較的遅いこと、食習慣(例えば、脂肪摂取が少ない)など喫煙による効果を減らす要因が存在することなどの可能性が考えられます。 米国において、20年の間隔をおいて行われた2つの研究(第1期、第2期)を比べると、ほとんどの部位において、第2期の研究における相対リスクのほうが高い値を示しています。今後、わが国においても、喫煙による相対リスクの動向を確認する必要があります。 4.喫煙ががんを引きおこすしくみ たばこの煙の中には、多環芳香族炭化水素などの約20種類の発がん物質が含まれています。発がん物質の多くは、体内で活性型に変化したのち、DNAと共有結合をしてDNA付加体を形成します。このDNA付加体がDNA複製の際に、遺伝子の変異を引きおこします。こうした遺伝子変異が、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、DNA修復遺伝子などにいくつか蓄積することによって、細胞ががん化すると考えられています。喫煙者の肺がん患者さんの肺がん細胞には、がん遺伝子やがん抑制遺伝子に変異が多く認められます。また、多環芳香族炭化水素がDNA付加体を形成する位置に一致して、遺伝子変異が認められます。 喫煙者に生じた肺がんでは、こうした遺伝子変異が非喫煙者の肺がんよりも多くみられ、悪性度が高いことが知られています。 5.喫煙の影響の受けやすさ ベンツピレンなどの多環芳香族炭化水素は、薬物代謝酵素による代謝を受けて解毒されます。解毒過程で生成される中間物質の化学的活性が強く、これらの中間物質がDNAと共有結合を結んでDNA付加体を形成します。こうした薬物代謝酵素の活性は遺伝的に決定されており、喫煙の影響を受ける度合いは遺伝的要素が関連している可能性があります。 6.環境たばこ煙の影響 喫煙は、喫煙者本人だけでなく周囲の非喫煙者にも影響をおよぼします。これを環境たばこ煙(あるいは受動喫煙)といいます。環境たばこ煙により、肺がんリスクが1.2倍に増加すると推定されています。 7.禁煙の効果 禁煙することにより、肺がんのリスクは減少し、禁煙後10年で、喫煙継続者に比べてリスクが1/3〜1/2にまで減少します。ただし、喫煙と関連する他の疾患(心筋梗塞など)に比べると、リスク減少の程度はゆっくりしています。若い年齢で禁煙するほど効果は大きいですが、どんな年齢で禁煙をしても、喫煙継続者に比べて確実にリスクは減少します。 |
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